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ありとあらゆるわが思
ありとあらゆるわがおもい |
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作品ID | 55219 |
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著者 | ダンテ アリギエリ Ⓦ |
翻訳者 | 上田 敏 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店 1962(昭和37)年12月16日 |
初出 | 「明星 未歳・一」1907(明治40)年1月 |
入力者 | 川山隆 |
校正者 | 成宮佐知子 |
公開 / 更新 | 2012-11-26 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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ありとあらゆるわが思、「愛」と語りて弛なく
その種々の語の數いと繁きひといろは、
勢猛にわれをしも力の下に壓さむとし、
またひといろは勢を誇り語りて、らうがはし。
あるは望を抱きつゝ、悦われにあらしめつ、
あるは頻にわれをしも憂ひ悲しましむれども、
「憐」仰ぐひとことは、すべての思皆おなじ、
心の底に潛みたる「恐」によりてふるひつゝ。
さてはいづれの思をば、頭の心と定むべき。
語り出むと思へども、語らふべきを吾知らず。
ただ茫然と、迷はしき「愛」の衢にひとり立つ。
かくて思のいづれにも適はむ事を求むれば、
他に詮術のあらばこそ、口惜しけれど吾は唯
身のまもりにと呼はらむ、かたきの姫の「憐」を。