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きその日は
きそのひは |
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作品ID | 55221 |
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著者 | ダンテ アリギエリ Ⓦ |
翻訳者 | 上田 敏 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店 1962(昭和37)年12月16日 |
初出 | 「家庭文芸 創刊号」1907(明治40)年1月 |
入力者 | 川山隆 |
校正者 | 成宮佐知子 |
公開 / 更新 | 2012-11-26 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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きその日は思むすぼれ、とぼとぼと
馬を進むる憂き旅路、これも旅かや
まのあたり、路のもなかに「愛」の神、
巡禮姿、しほたれて、衣手輕し。
うれはしき其かんばせは、さながらに、
位はがれしやらはれのやつれ姿か、
憂愁の思にくれて吐息がち、
人目を避けて、うなだるゝあはれの君よ。
ふとしもわれを見給ひて呼び給ふやう、
『われは、今、かの遠里をはなれ來ぬ。
さきにはそこに汝が身の心の臟をぞ
置きたれど、新の悦得させむと
持ち來りぬ』とのたまひつ、忽ちわれに
憑きたまひ、消え失せたるぞ不思議なる。