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![]() いさんぶんぱいしょ |
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作品ID | 55467 |
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著者 | 富永 太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社 1975(昭和50)年7月10日 |
入力者 | 村松洋一 |
校正者 | 川山隆 |
公開 / 更新 | 2014-03-20 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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わが女王へ。決して穢れなかつた私の魂よりも、更に清浄な私の両眼の真珠を。おんみの不思議な夜宴の觴に投げ入れられようために。
善意ある港の朝の微風へ。昨夜の酒に濡れた柔かい私の髪を。――蝋燭を消せば、海の旗、陸の旗。人間は悩まないやうに造られてある。
わが友M***へ。君がしばしば快く客となつてくれた私の Sabbat の洞穴の記念に、一本の蜥蜴の脚を、すなはち蠢めく私の小指を。――君の安らかならんことを。
今日もまた、陽は倦怠の頂点を燃やす。
シエヘラザードへ。鳥肌よりもみじめな一夜分の私の歴史を。
S港の足蹇へ。私の両脚を。君の両腕を断つて、肩からこれを生やしたまへ。私の血は想像し得られる限り不純だから、もしそれが新月の夜ならば、君は壁を攀ぢて天に昇ることが出来る。
***嬢へ。私の悲しみを。
売笑婦T***へ。おまへがどれほど笑ひを愛する被造物であるかを確かめるために、両乳房の間に蠍のやうな接吻を。
巌頭に立つて黄銅のホルンを吹く者へ。私の夢を。――紫の雨、螢光する泥の大陸。――ギオロンは夜鳥の夢に花を咲かす。
母上へ。私の骸は、やつぱりあなたの豚小屋へ返す。幼年時を被ふかずかずの抱擁の、沁み入るやうな記憶と共に。
泡立つ春へ。pang ! pang !