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橋の上の自画像
はしのうえのじがぞう |
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作品ID | 55486 |
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著者 | 富永 太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社 1975(昭和50)年7月10日 |
初出 | 「山繭 創刊号」1924(大正13)年 |
入力者 | 村松洋一 |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2013-11-10 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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今宵私のパイプは橋の上で
狂暴に煙を上昇させる。
今宵あれらの水びたしの荷足は
すべて昇天しなければならぬ、
頬被りした船頭たちを載せて。
電車らは花車の亡霊のやうに
音もなく夜の中に拡散し遂げる。
(靴穿きで木橋を蹈む淋しさ!)
私は明滅する「仁丹」の広告塔を憎む。
またすべての詞華集とカルピスソーダ水とを嫌ふ。
哀れな欲望過多症患者が
人類撲滅の大志を抱いて、
最後を遂げるに間近い夜だ。
蛾よ、蛾よ、
ガードの鉄柱にとまつて、震へて、
夥しく産卵して死ぬべし、死ぬべし。
咲き出でた交番の赤ランプは
おまへの看護には過ぎたるものだ。