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俯瞰景
ふかんけい |
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作品ID | 55489 |
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著者 | 富永 太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社 1975(昭和50)年7月10日 |
入力者 | 村松洋一 |
校正者 | 川山隆 |
公開 / 更新 | 2014-04-16 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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溝ぷちの水たまりをへらへらと泳ぐ高貴な魂がある。かれの上、梅雨晴れの輝かしい街衢の高みを過ぎ行くものは、脂粉の顔、誇りかな香りを放つ髪、新鮮な麦藁帽子、気軽に光るネクタイピン……この魂にとつて、一日も眺めるのを欠くべからざる物らの世界である。さて、かれは、これらの物象の漸層の最下底に身を落してゐる。軽装の青年紳士の、黒檀のステツキの石突と均しく位してゐる。しかも、かれは、この低みから、すべての部分がかれの上に在るあの世界をみおろすことのできる、不思議な妖術を学び得た魂である――この屈従的な魂は。