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無題 京都
むだい きょうと |
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作品ID | 55494 |
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副題 | 富倉次郎に とみくらじろうに |
著者 | 富永 太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社 1975(昭和50)年7月10日 |
初出 | 「山繭 第四号」1925(大正14)年3月 |
入力者 | 村松洋一 |
校正者 | 川山隆 |
公開 / 更新 | 2014-04-22 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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おまへの歯は よく切れるさうな
山々の皮膚が あんなに赤く
夕陽で爛らされた鐃鉢を
焦々して 摺り合せてゐる
おまへはもう 暗い部屋へ帰つておくれ
おまへの顎が、薄明を食べてゐる橋の下で
友禅染を晒すのだとかいふ黝い水が
産卵を終へた蜉蝣の羽根を滲ませる
おまへはもう 暗い部屋へ帰つておくれ
色褪せた造りものの おまへの四肢の花々で
貧血の柳らを飾つてやることはない
コンクリートの護岸堤は 思ひのままに白けさせよう
おまへはもう 暗い部屋へ帰つておくれ
ああ おまへの歯はよく切れるさうな