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立待岬にいたりて
たちまちみさきにいたりて |
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作品ID | 55524 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
初出 | 「旭川新聞」1928(昭和3)年5月31日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-04-22 / 2015-03-08 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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露西亜の船の沈んだ片身に残したと聞く石を抱いて
われは又ある日のざんげをするか
函館山は高く
要塞地として秘密を冠る
おごそかな
壮大なる岩礁の牢たる屹立は
東方に面して
何をひそかに語りつつあるか
黒鳥のあまた 岩に群がり
波に浮び 魚を捕う
かつてここら立待岬のアイヌ達は
魚群の来るを銛を携えて立ち待てりと伝う
東海の波濤のすさまじく寄せ打つ処
崖上の草地にマントを着たる四五人の少女等
寝そべりてハーモニカを吹き、微かに歌をうたう
蟹とたわむれ 充たし得ぬ薄幸詩人の最后の願いは
この函館の地に死ぬことを願いしと碑銘に物語る
その碑は今この岬へ行く山腹の途辺にあり
我をしも死地の願いを言わば
この地に久遠のあこがれを抱くであろう