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故郷断想
こきょうだんそう |
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作品ID | 55553 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-02-21 / 2015-01-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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*
小川は濁っている
ヤマメ、イワナのようなうまい小魚はもうそこへはのぼって来ない
淀みにはどぶ臭い雑魚が居り
廿年の昔の清冷な流れの面影がない
*
連なる丘陵は
ただ禿山であり
焼けたエゾ松の根株が淋しく黒く佇んで居り
昔そこに美しい針葉樹林があり
楡、タモ、栓、楢、紅葉、桜、胡桃、白椛の林があって
小鳥や兎達の楽しい場所であったことは
きれいに忘れ去られている
*
部落の人々は何を考えているのか
娘のたのもしい夫のことでもない
息子のきれいな気の利いた嫁のことでもない
土地が自分のものであったら
今年の収穫が高くうれたら