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待っていた一つの風景
まっていたひとつのふうけい |
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作品ID | 55568 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
初出 | 「旭川新聞」1928(昭和3)年1月26日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-06-27 / 2015-03-08 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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痩たる土壌をかなしむなく
遠き遍土にあるをかこつなく
春となれば芽をだし
夏となれば緑を盛り花を飾る
貧しく小さくして尚たゆまず
ただ一つ
秋、凡ての秋において
ただ一つ
種を孕んだわが名知らぬ草
精一杯に伸びんとして努力空しく
夏のま中炎天のあまり枯死してしまったものもある
草にして一生は尊い生命の凡てである
一つの種は一つの種をはらんだ
そして遍土の痩土に
初冬のころ
雪を戴き埋れ、静かに待っていた一つの風景
一九二七年十二月拙き心情を綴り旭川にある小熊秀雄氏に贈る