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![]() みちははたしていずれ |
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作品ID | 55575 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-06-27 / 2015-03-08 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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生と死の路は今自分の行手にあり
自分はこの全き方向のちがった路の
何れを歩んでいるかを知らない
歩む路は一すじ
ただこの一すじが
生命の歓喜へ向っているか
また永遠の死へ辿っているか
自分にも解き得ざる謎
謎の日は今、日毎つづきつつある
だが博士は言った
「半年か一年か保証は出来ないがね」
ここで自分の歩む路は死だと予断されている
も一人の博士はただ眉をひそめて
「生死の問題よりも苦痛よりのがれる方法を」と自分の言葉を認めて麻薬で劇薬の注射を与えて去った
又も一人の医師は言う
「もう手おくれだ どこもかしこも悪い
ただ死は時日の問題だ」
自分はすべての医師に絶望を語られ
お前は死の路を歩むでいるのだと言われてその儘に
自分の生命力が博士達の想像と同一であるとは信じない
信じたくない。
博士達にだって幾月幾日に断定出来ないからだだ
ただ自分の生命は非常に死に近づいている、
死の手に引かれるか
又再び生の力に引上げられるか
あぶなげなわが生命 はかなきわが生命
わが今歩める路は果して何れか
一九三五・五・七