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北海の夜
ほっかいのよる |
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作品ID | 55584 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
初出 | 「白楡 第二十五号」1923(大正12)年8月 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-06-21 / 2015-04-01 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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1
旗がしきりにゆれている
ハタハタと、又ハタハタと
時には風が吹いて来て
ゴトンと音を立ててゆく
外はほんとに暗いのだ
自分よ、或る夜の事を思い出せ
そしてぞうっと身ぶるえせ
今夜の雪は青白い
すごい黒さが沁みている
2
海の妖婆が踊るよな
暗い恐ろしい夜となる
日本海と太平洋の沖の方に
何か変りはないだろうか。
海辺の街の病める友は
こんな夜なら寂しかろう
母がはなれているのさい
悲しくなって来るだろう
窓の近くに横たわり
眠りもせずに、うつうつと
ものを思えるその時は
そうっと窓の近くにて
海の妖婆が笑うだろう
私も自分がさびしくて
忘れようにも忘られず
ぞうっと身ぶるえするのだよ。
一〇・三・四稿