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東方の窓辺にて
とうほうのまどべにて |
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作品ID | 55592 |
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著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-05-01 / 2015-03-08 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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私のいる家の東方に窓があった
私は農家の二階に間借りして幾十日かを過す身であった
私は自分の起居に不自由の身をそこに運び、
ひたすら、健康の日を恋していたのである、
かがやく健康の美しさは私の希望であった
私は東方に追憶の瞬間を持つ
私の室の東方の窓はそこへの視野を展開している
ハコネの連山は眺望の彼方にある
山脈の起伏は無言に昨日も今日も変りはないが
ただ風に送られる雲の往来と空色の変化とを発見する、
雲の彼方
橙色の空の下
朝となれば朝焼け
夕べとなれば夕焼け
真紅に輝く折々の熱情は
私の病める身になおも燃えんとする
私は今東方の窓辺に佇む
私は一人の妻を想うのみであろうか、
私はただ昨日の日にきれいな煙を吐きかけるのみであろうか
私の胸には
決してたゆることなき未来への希望が
決して消えることなき新らしき日本の姿が
この窓を通し
多くの同志への信頼の中に燃えつつあるを発見する