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探検実記 地中の秘密
たんけんじっき ちちゅうのひみつ
作品ID55727
副題03 嶺の千鳥窪
03 みねのちどりくぼ
著者江見 水蔭
文字遣い旧字旧仮名
底本 「探檢實記 地中の秘密」 博文館
1909(明治42)年5月25日
入力者岡山勝美
校正者岡村和彦
公開 / 更新2021-08-12 / 2021-07-27
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

――雪ヶ谷の道路――金槌で往來を擲く――嶺千鳥窪發掘歴史――土瓶の續出――露西亞式の發掘――棄權の跡――土瓶の仇討――都々逸の功徳――異臭紛々――内部に把手の有る破片――

 嶺の發掘を語る前に、如何しても故飯田東皐君との關係を語らねばならぬ。
 三十六年の夏、水谷氏が内の望蜀生と共に採集に出かけて、雪ヶ谷の圓長寺の裏の往還を掘つて居た。道路が遺跡に當るので、それをコツ/\掘りかへして居たのだ。
 其所へ來合せた一紳士が、貴君方は何をするんですかと咎めたので、水谷氏は得意の考古學研究を振舞はした。其紳士連りに傾聽して居たが、それでは私も仲間に入れて貰ひたい。兎も角手前の宅へ來て下さいといふので、二人はのこ/\附いて行つた。
 其先きは、つい、下の、圓長寺。日蓮宗の大寺である。紳士が帽子を取去ると、それは住職の飯田東皐氏。
 此所で水谷氏と飯田氏とはすツかり懇意に成つて了つたので、今度は僕の弟子を連れて來ますから、一處に發掘しませうと、大採集袋を擴げた結果、七月十八日に水谷氏は余と高橋佛骨氏と、望蜀生とを率ゐて行く事となつた。
 余と望生とは徒歩である。幻花佛骨二子は自轉車である。自轉車の二子よりも、徒歩の余等の方が先きへ雪ヶ谷へ着いたなどは滑稽である。如何に二子がよたくり廻つたかを想像するに足る。
 待てども/\遣つて來ぬので、ハンマーを持つて往還をコツ/\穿ち、打石斧の埋れたのなど掘出して居たが、それでも來ない。仕方が無いので此方の二人は、先きへ寺の中に入つた。
 其後へ自轉車隊が來て、居合せた農夫に、二人連の、人相の惡い男子が、此邊をうろ/\して居なかつたかと問うて見ると、農夫頗る振つた答へをした。
『はア今の先き、二人連で、何んだか知んねえが、金槌を持つて、往來を擲きながら歩いて居たツけ』
 金槌で往來を擲くとは奇拔である。大笑ひをして、自轉車隊は寺に入つた。
 四人合して頼母を乞うて見ると、住職は不在とある。
 や、大失敗と、がツかりして、先づ本堂の椽側へ腰を掛ける。いつしかそれが誰先きとなく草鞋を脱ぐ。到頭四人本堂へ上り込んで、雜談をする。寐轉ぶ。端ては半燒酎を村の子に頼んで買ひに遣つて、それを飮みながら大氣焔を吐く。留守居の女中は烟に卷れながら、茶を入れて出す。菓子を出す。菓子は疾くに平げて了つて、其後へ持參の花竦薑を、壜から打明けて、酒の肴にして居る。
 其所へ、ひよツくり住職は歸つて來て。
『いやこれは/\』と驚かれた。
 然うして、四邊をきよろ/\見廻しながら。
『留守中[#ルビの「るゐちう」はママ]これは失禮でした。妻が居ませんので、女中[#ルビの「ぢよちう」は底本では「ぢうちう」]ばかり‥‥や、つまらん物を差上げて恐縮しました』と花竦薑を下目で見る。
 入物は其方のですが、其つまらん中身は持參ですと言ひたい處を、ぐツと我慢して、余等は初…

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