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探検実記 地中の秘密
たんけんじっき ちちゅうのひみつ
作品ID55728
副題04 馬籠と根方
04 まごめとねがた
著者江見 水蔭
文字遣い旧字旧仮名
底本 「探檢實記 地中の秘密」 博文館
1909(明治42)年5月25日
入力者岡山勝美
校正者岡村和彦
公開 / 更新2021-08-12 / 2021-07-27
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

――  ひ?[#「  ひ?」はママ]――燒土層を成す――土器製造所か――土器の葢――貝塚曲玉の[#「貝塚曲玉の」は底本では「貝 曲玉の」]一種――

 馬籠の貝塚と根方[#ルビの「ねがた」は底本では「ねかた」]の貝塚とは、池上街道を挾んで兩方に有る。併し、 概[#「 概」はママ]我々はそれを馬籠の名の下に一括して居る。別に理由は無いが、最初は根方の貝塚をも、馬籠だと信じて居たからで。地名表には根方を目方としてある爲に、他を探して居て、根方を過ぎながら、それとは知らなかつたのだ。
 余の最初に此地を探檢したのは、三十五年の十二月二十六日であつた。それから殆ど毎週一度は、表面採集に通つて居た。茶店の老人夫婦とは懇意に成つて『旦那又石拾ひですか。然う始終見えては、既う有りますまい』と笑はれる位にまでなつた。
 打石斧、磨石斧、石鏃、把手、破片、土瓶の口、そんな物は、どの位ゐ數多く採集したか知れぬが、未だ發掘をして見た事が無いので、茶店の息子を介して、地主の政右衞門といふ人を説き、其人の持地を發掘する事と成つた。
 三十七年九月十四日、幻翁望生の二人と共に余は馬籠に行き、茶店に荷物や着物を預けて置き、息子を人夫に頼んで、遺跡に向つた。
 それは根方地で、街道から南面し、右手に小徑がある、それを曲つてから、又右手の畑が目的地だ。
 破片は出るけれど、如何も思はしい物がなく、漸く底拔土器を一箇余が得た位ゐで、此日は引揚げた。
 同月二十三日には幻望二子の他、玄川子を加へて四人で掘つた。今度は、小徑の左方の緩斜面を成す芋畑である。
 幻翁は土器を二三箇出した。
[#挿絵]
第四圖(武藏馬籠)
イ(土器蓋) ロ(朱塗土器蓋) ハ(磨石斧) ニ(曲玉) ホ(石匙)

 余は大把手の破片と、ボロ/\に破壞れかゝつた土器一箇と、小磨石斧一箇(第四圖ハ參照)とを得た。
 玄子朱塗土器の蓋(第四圖ロ參照)を、望生も亦土器の蓋を得た。
 其所へ活東花舟二子が應援として遣つて來たので、同勢六人と成り、實に賑やかな發掘であつた。
 同月二十八日には、幻翁玄子と余との三人で出掛けた。今日は馬籠方で街道を左に曲つた小徑の左手で、地主も異なるのである。
 此所は先年、幻翁[#ルビの「げんおう」は底本では「げん う」]が、香爐形其他の大珍品[#ルビの「だいちんぴん」は底本では「だいちいぴん」]を出した遺跡の續きなので、如何にも有望らしく考へられたのである。
 人夫として茶店の息子が鍬を取つたが、間もなく石匙を掘出した。(第四圖ホ參照)
 貝層は極めて淺いが、其下に燒土の層が有つて、其中に少からず破片がある。幻翁の言に由ると、香爐形の出た層と同一だといふ。
 今日は香爐形以上の珍品を掘出したいと力味かへつて居ると、余は磨石斧を其燒土の中から掘出した。
 更に猛進したが、如何も思はしくなく、却つて玄子…

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