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閒花集
かんかしゅう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「三好達治全集第一卷」 筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日
初出漁家「三田文學 八卷四號」1933(昭和8)年4月<br>平津「三田文學 八卷四號」1933(昭和8)年4月<br>村の犬「三田文學 八卷四號」1933(昭和8)年4月<br>揚げ雲雀「三田文學 八卷四號」1933(昭和8)年4月<br>一家「帝國大學新聞」1933(昭和8)年5月1日<br>廐舍「帝國大學新聞」1933(昭和8)年5月1日<br>新緑「帝國大學新聞」1933(昭和8)年5月1日<br>チューリップ「帝國大學新聞」1933(昭和8)年5月1日<br>桃花源「一家 一號」1933(昭和8)年4月<br>畎畝「一家 一號」1933(昭和8)年4月<br>春日「一家 一號」1933(昭和8)年4月<br>庭前「セルパン 二五號」1933(昭和8)年3月<br>椎の蔭「セルパン 二五號」1933(昭和8)年3月<br>鐵橋の方へ「セルパン 二五號」1933(昭和8)年3月<br>朝「改造 一四卷一二號」1932(昭和7)年12月<br>晩夏「改造 一四卷一二號」1932(昭和7)年12月<br>蝉「改造 一四卷一二號」1932(昭和7)年12月<br>虻「改造 一四卷一二號」1932(昭和7)年12月<br>空山「文藝評論 一卷二輯」白水社、「セルパン 三六號」1934(昭和9)年2月<br>夜明けのランプ「セルパン 三六號」1934(昭和9)年2月<br>夜の部屋「文藝評論 一卷二輯」白水社、1934(昭和9)年2月<br>空林「文藝評論 一卷二輯」白水社、1934(昭和9)年2月<br>瀧「文藝評論 一卷二輯」白水社、1934(昭和9)年2月<br>一つの風景「世紀 創刊號」1934(昭和9)年4月<br>雉「世紀 創刊號」1934(昭和9)年4月<br>頬白「世紀 創刊號」1934(昭和9)年4月<br>早春「文藝 二卷五號」改造社、1934(昭和9)年5月<br>雪景「文藝 二卷五號」改造社、1934(昭和9)年5月<br>雉「文藝 二卷五號」改造社、1934(昭和9)年5月<br>千曲川「文藝 二卷五號」改造社、1934(昭和9)年5月<br>「檸檬」の著者「文藝 二卷五號」改造社、1934(昭和9)年5月<br>鞍部「世紀 一卷四號」1934(昭和9)年7月<br>訪問者「世紀 一卷四號」1934(昭和9)年7月<br>故郷の街「世紀 一卷四號」1934(昭和9)年7月<br>鯉「世紀 一卷四號」1934(昭和9)年7月
入力者kompass
校正者大久保 知美
公開 / 更新2018-08-23 / 2018-07-27
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#ページの左右中央]


この小詩集を梶井基次郎君の墓前に捧ぐ


[#改丁]



砂上

海 海よ お前を私の思ひ出と呼ばう 私の思ひ出よ
お前の渚に 私は砂の上に臥よう 海 鹹からい水 ……水の音よ
お前は遠くからやつてくる 私の思ひ出の縁飾り 波よ 鹹からい水の起き伏しよ
さうして渚を噛むがいい さうして渚を走るがいい お前の飛沫で私の睫を濡らすがいい



「籠の中にも季節は移る 私は歌ふ 私は歌ふ 私は憐れな楚囚 この虜はれが
私の歌をこんなにも美しいものにする 私は歌ふ 私は歌ふ やがて私の心を費ひ果して
私の歌も終るだらう 私は眼を瞑る 翼をたたんで 脚を踏ん張つて
この身の果を思ひながら それは不幸だらうか? 私は私の歌に聽き耽る」

晝の月

――この書物を閉ぢて 私はそれを膝に置く
人生 既に半ばを讀み了つたこの書物に就て ……私は指を組む
枯木立の間 蕭條と風の吹くところ 行手に浮んだ晝の月 ああ
あの橇に乘つて 私の殘りの日よ 單純の道を行かう 父の許へ

路傍の家

その家の窓のほとり 一つの節孔から
鼠の鼻が見え 隱れ
いま そこを囓つてゐる
壁の中から いそがしく食器を洗ふ音

理髮店にて

「鋏で切つてやつたんです 腫物ができたから」
憐れな金絲雀よ お前は指を一本切られた
元氣な仲間のあひだにあつて 片脚で立ちながら
思案の後でお前は歌ふ 私は耳を傾ける 稀れになつたお前の歌に

工場地帶

夕暮れの堀割に ほのかに降りた冬の霧
移るともなく移つて行く 一つの船の艪の軋み
……船夫の動き
岸邊にたつた煙突の をちこちの煙のなびき

漁家

街と街との間から 山が見える 青い靄がかかつてゐる
家と家との間から 川が見える ……舟がゆく
渚から 黒い猫が歸つてくる
南天の實で遊ぶ子ら 靴の踵をふみつぶして

平津

黒く光つた柱に 春が來た その柱暦に
堤は遠く枯れたまま あれ 犬が走る
枯れた蘆間を 犬が走つてゐる
飛びたつ鳥もない……

村の犬

かすかな木魂さへそへて 犬が啼いてゐる 靜かな晝の村
私はそこに立ちどまる 庭の隅 藏の前だな
一つの屋敷の奧で 犬が啼いてゐる
川向ふの葱畑から またひよいと犬がとび出して 耳を傾ける

揚げ雲雀

雲雀の井戸は天にある……あれあれ
あんなに雲雀はいそいそと 水を汲みに舞ひ上る
杳かに澄んだ青空の あちらこちらに
おきき 井戸の樞がなつてゐる

一家

鶫の群れは 石鹸工場の空を來て
川を越え ……四つ手網しづかに上る
三角洲の樟の森に降りる 枯れた梢に
彼ら一家は休んでゐる

廐舍

梅散り 廐に蠅が生れ
曳き出された馬の腹に
小川の反射がゆらいでゐる
私の影は 葱畑の葱の上

新緑

林の上の碧い空 繭のやうな白い雲
新緑のみづみづしさは 繪のやうだ ……夢のやうだ
私…

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