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山果集
さんかしゅう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「三好達治全集第一卷」 筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日
初出仔羊「四季 三號」1935(昭和10)年1月<br>雷蝶「四季 六號」1935(昭和10)年4月<br>海邊「四季 創刊號」1934(昭和9)年10月<br>黎明「四季 創刊號」1934(昭和9)年10月<br>唖蝉「四季 創刊號」1934(昭和9)年10月<br>鮒「四季 創刊號」1934(昭和9)年10月<br>燈下「早稻田文學 二卷三號」1935(昭和10)年3月<br>黄葉「行動 三卷一號」1935(昭和10)年1月<br>目白「行動 三卷一號」1935(昭和10)年1月<br>白薔薇「行動 三卷一號」1935(昭和10)年1月<br>繍眼兒「行動 三卷一號」1935(昭和10)年1月<br>薔薇「行動 三卷一號」1935(昭和10)年1月<br>一枝の梅「四季 三號」1935(昭和10)年1月<br>白梅花 一「四季 四號」1935(昭和10)年2月<br>白梅花 二「四季 四號」1935(昭和10)年2月<br>途上「四季 四號」1935(昭和10)年2月<br>紅梅花「四季 五號」1935(昭和10)年3月<br>微雨「四季 五號」1935(昭和10)年3月<br>晴天「四季 五號」1935(昭和10)年3月<br>皿の中の風景「中央公論」1935(昭和10)年5月<br>猫「中央公論」1935(昭和10)年5月<br>古帽子「中央公論」1935(昭和10)年5月<br>熊の膽賣り「四季 九號」1935(昭和10)年7月<br>山鳩「四季 九號」1935(昭和10)年7月<br>黄鶲「帝國大學新聞 五八四號」1935(昭和10)年7月1日<br>日沒「帝國大學新聞 五八四號」1935(昭和10)年7月1日<br>送水管「帝國大學新聞 五八四號」1935(昭和10)年7月1日<br>木兎「四季 九號」1935(昭和10)年7月<br>蠅の羽音「文藝 三卷七號」改造社、1935(昭和10)年7月<br>初夏「文藝 三卷七號」改造社、1935(昭和10)年7月<br>鯉幟「文藝 三卷七號」改造社、1935(昭和10)年7月<br>向ひの山「文藝 三卷七號」改造社、1935(昭和10)年7月<br>山麓「帝國大學新聞 五八四號」1935(昭和10)年9月1日<br>丘の上「帝國大學新聞 五八四號」1935(昭和10)年7月1日<br>水聲「四季 九號」1935(昭和10)年7月<br>雨後「四季 一〇號」1935(昭和10)年8月<br>新月「四季 一〇號」1935(昭和10)年8月
入力者kompass
校正者大久保 知美
公開 / 更新2018-04-05 / 2018-03-26
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

仔羊

海の青さに耳をたて 圍ひの柵を跳び越える 仔羊
砂丘の上に馳けのぼり 己れの影にとび上る 仔羊よ
私の歌は 今朝生れたばかりの仔羊
潮の薫りに眼を瞬き 飛び去る雲の後を追ふ

雷蝶

雷の後 かみなり蝶が村へくる
村長邸の裏庭の 百合の花粉にまみれてくる
交番のある四辻で 彼女はちよいと路に迷ふ さうして彼女は風に揚る
椎の木よりもなほ高く 火ノ見櫓の 半鐘よりもなほ高く

海邊

雨後の
横雲
そのもとに 鳶の啼く
わが 旅の空

黎明

二つ四つ 砂上に咲いた南瓜の花
これらのランプを消し忘れて 夜はどこへいつたか
川の向うへ
夜は貨物列車になつて トンネルにかくれてしまつた

唖蝉

唖蝉よ お前は歌手の姿をして しかも音樂の否定者
お前は一つの矛盾 沈默の詩人 いま婆娑と 私の窗を訪れる
白雲の下 枝頭の禪師
お前の透明な翼に 初秋の空が映り 晩夏の林が透いて見える



土を掘つて 甕を埋め
水を滿たし 鮒を放つた
窗下の秋 芭蕉の蔭に 時たま彼らは音をたてる
假りに私は 彭澤の令 燈火を消して月に對す

燈下

書は一卷 淵明集
果は一顆 百目柿
客舍の夜半の靜物を
馬追ひのきてめぐるかな

囘花

囘り咲きの 梨花二三輪
[#挿絵]頭の燃える廢園……
蝸牛 睡り
百舌 呼ぶ

石榴

風に動く
甘い酸つぱい秋の夢 石榴
空にはぢけた
紅寶玉の 火藥庫

一隅

秋の日の すがすがしい午前の日ざし 石垣の隙間から
蟹が出る 何かしら小さなものを その赤い爪は拾ひ上げる
はつきりと落ちた 自らの影の上に 爪先立ちで
彼は行き 彼は彳ちどまり さうして彼は戻つてくる

黄葉

山に向つて 犬が啼いてゐる
その一ところに畑をもつた 夕暮の黄葉の山
谺がかへつてくる また犬が啼く
自轉車が二つ 話しながら麓をすぎる

目白

蝶が一匹 新らしい窓の障子に 半日跪づき
祈祷のさまをしてゐたが 已に 仆れた
さうしてここに 今日囚はれた 目じろの眼
冬 冬である 柱時計を捲く音も

椋鳥

日ひと日 うら山の山懷ろに
おんなじことを喋つてゐる 椋鳥の群れ
松の間 椎の梢に 二羽たち 三羽たち
やがてまた 緑にかくれて……

薊の實

二つ 三つ 四つ 冬の日の微風に乘つて 海の方
青空の碧に消える 薊の實……
ああこともなげに 健氣な 小さなものの旅立ちよ
どうかお前に學びたい 日ごろ年ごろ 心配性の私の歌も

白薔薇

秋刀魚ほす
冬の日の
野菜畑の
白薔薇

繍眼兒

繍眼兒よ 氣輕なお前の翼の音 身輕なお前の爪の音
嘴を研ぐ微かな剥啄 日もすがら私の思想を慰める
お前の唱歌 お前の姿勢 さてはお前の曲藝
それら 願くば なみされたお前の自由よ やがて私の歌となれ

薔薇

薔薇一輪 風吹けばうなじ動かし
日照れば溜息つく 香ぐはしい冬の薔薇

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