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雪解けにすべった丁玲女史
ゆきどけにすべったていれいじょし
作品ID56195
著者平野 零児
文字遣い新字新仮名
底本 「平野零児随想集 らいちゃん」 平野零児遺稿刊行会
1962(昭和37)年11月1日
入力者坂本真一
校正者持田和踏
公開 / 更新2023-10-12 / 2023-10-02
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 最近ソ連の「雪解け」もいろんな曲折があった。新たな粛清が、シェピーロフ書記も[#「シェピーロフ書記も」は底本では「シェピーフロ書記も」]モロトフやマレンコフらと共に 追放に[#「共に 追放に」はママ]なった。インテリゲンチャの間に、不健全な傾向をひろげた責任者であると指摘された。ソ連の整風も、第二十回党大会以来から更に新段階に入ったものと見られる。
 新中国も、昨年の「百花斉放」「百家争鳴」の段階から、更に一転した。ソ連にしても中共にしても、それは単に文化面だけではない。共産主義国家には、文学や哲学は、国家や政治には超越しているという風な考えは許されない。
 経済が基礎で、政治や文化は、その基礎の上に建てられた上層建築であるという、マルクス主義の理論を守っているから、一つの文学運動も大きな政治問題であり、一つの思想的傾向が、政治や文化と切り離されたものであることは絶対にない。
 だから今回の中国の整風運動の新段階も、広く、二百余名が厳しい批判の対象となり、その中には羅森工業相[#「羅森工業相」はママ]、章伯鈞交通相[#「章伯鈞交通相」は底本では「章伯釣交通相」]、章※[#「冖/田/(「卅」にさらに縦棒を一本付け加える)」、60-8]品食糧相[#「章※[#「冖/田/(「卅」にさらに縦棒を一本付け加える)」、60-8]品食糧相」はママ]、光明日報編集長儲安平など、人民政府に枢要な地位を占めた人々の多数がヤリ玉に挙っている。そして同時に文壇方面には、丁玲女史が挙げられたという。丁玲女史は中国作家協会副主席であり、同理事の陳企霞と共に、有名な詩人艾青もそのグループとされた。
 作家協会内中央党グループが開いた、拡大会議は「丁、陳氏は、党内で反党的攻守同盟を結び、今回の整風運動が始まると一九四五年の胡風事件のさい行われた『文芸報』のブルジョア的方向に対する点検と、一九五五年作家協会が、両氏に対して下した結論を覆えそうと企て、却って作家協会の粛清闘争は誤りであると攻撃し、機関誌『文芸報』に対抗する別の同人雑誌の計画を秘密のうちに行い、協会副主席の馮雪峰氏もこれに加わっていた」と指摘した。
 私はこれらの問題に対しては全くのカキのぞきで、正確な事実もつかんでいないし、用意もない。けれどもただ一ついえることは、このようなことは常にあり得ることで、別に驚くほどのことはないということである。
「そんなことでは、共産国家の文士なんて者は、おっかなビックリで、安心して創作なんかできないや」という人があるかも知れない。永い間、私はこの国の戦犯として、管理所のヘイのなかにいて、あの三反、五反の反革命の粛清、胡風問題などの厳しい整風運動は、私達自身のいわゆる学習の課題でもあった。その体験の中で、いえることは反動的思想を持っていたら、創作活動は愚か、思想改造なんか全くおっかなビックリで、…

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