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動物物語 狼の王ロボ
どうぶつものがたり おおかみのおうロボ
作品ID56331
著者シートン アーネスト・トンプソン
翻訳者薄田 斬雲
文字遣い新字新仮名
底本 「少年倶楽部名作選 3 少年詩・童謡ほか」 講談社
1966(昭和41)年12月17日
初出「少年倶楽部」講談社、1938(昭和13)年5月号
入力者sogo
校正者noriko saito
公開 / 更新2017-08-14 / 2017-07-17
長さの目安約 18 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 これはアメリカのアーネスト・トムソン・シートンという人が書いた物語で、文中『私』とあるのはシートン氏のことです。シートン氏は幼いころから動物が大好きで、動物に関する物語と絵をかくことを一生懸命勉強しました。そしていつも山岳や草原に露営の生活をして、野生動物を深く観察し、りっぱな動物物語をたくさんあらわしました。この『狼の王ロボ』は、その中でも傑作といわれる面白いものです。

おおかみ狩りの勧誘状

「カランポーの谷の王様おおかみロボの首に、一千ドルの懸賞がかけられた。」
 このうわさは、土地の新聞から全メキシコへひろまった。カランポーというのは、北部メキシコを流れている川の名だ。その川の流域には、広々とした草原が開け、それが大きな牧場になっていた。ところがこの谷に一群のおおかみがすんでいて、しきりに家畜をあらす。そのおおかみの群れの王と見られるのは、土地の人々からロボと呼ばれる、まことに悪がしこく獰猛なやつであった。
 土地の羊飼達はもちろん、よそからもおおかみ狩りを自慢の連中が続々とやってきて、この悪獣を退治しようとしたのであったが、いずれも失敗して引きあげる。そこでこの一千ドルの懸賞広告が新聞にでたのである。
 そのときカランポーに住む友人から、私のところへ、このおおかみ狩りをすすめる手紙がきた。その一節に、こんな文句があった。
「このロボというのは、灰色の大きなおおかみで、カランポー狼群の王といわれるだけにとても知恵がはたらき、毒薬にもわなにもかからない。この地方の牧場でその害をこうむらないものはなく、深夜はるかにその長くひいた異様なほえ声を聞くと、たれでもぞっと身ぶるいがするという。ロボの一党は、非常に数が多いようにいわれているが、私の調べたところでは、五、六頭にすぎないようだ。しかし、どれもこれも狂暴なやつばかりである。私には今のところそれを退治るいい工夫が浮かばん。このさいきみの腕にたよるほかない……」

さんざんな失敗

 私は以前、おおかみ狩りをしたことがあるが、おおかみを追っかけまわる痛快さといったらない。そのときの味がわすれられないので、友からの手紙を受けとるとろくに準備もしないでカランポーへ乗りこんだ。
 友は大喜びで私を迎えてくれた。その晩は何年ぶりかで一緒に酒を酌みかわしながら、私はくわしくようすを聞いた。
 友は語る、
「このあいだも、テキサス州から、タンナリーという男が、おおかみ狩りはおれにかぎると大元気で乗り込んできた。相当経験があるらしく、小銃や短銃も高価なものをもち、乗馬と二十頭の猟犬を連れていた。それで『明日にもロボの首を取ってきて床の間の飾り物に[#「飾り物に」はママ]する』と大きなことをいっていたものさ。ところが初日でみごと失敗してしまった。というのは、このタンナリーは、テキサス州の平な草原のおおかみ狩りにはなれて…

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