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鐘塔の悪魔
しょうとうのあくま
原題THE DIVIL IN THE BELFRY
著者ポー エドガー・アラン
翻訳者佐々木 直次郎
文字遣い新字新仮名
底本 「アッシャア家の崩壊」 角川文庫、角川書店
1951(昭和26)年10月15日
入力者江村秀之
校正者まつもこ
公開 / 更新2019-10-07 / 2019-09-27
長さの目安約 18 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

何時ですか?
古諺

 世界じゅうで一番立派なところはオランダの Vondervotteimittiss1の町である――いや、情けないことには、であった――ということは、大体誰でも知っている。しかしその町はどの本街道からも少し離れたところにあって、幾分辺鄙な場所だから、おそらく読者諸君の中でそこへ行ったことのある人はほとんどあるまい。であるから、そこへ行ったことのない人々のために、予が多少その町について記すことは至極適当なことであろう。そして実にこのことは、あの町の住民のために一般の同情を喚起したいという希望をもって、予がここに最近その土地に起った惨事の歴史を記そうとするのであるから、いよいよ必要なことなのである。予を知っている者は誰でも、予がかく自己に課したこの義務を、歴史家という肩書を熱望するものの常として、最も公平無私に、事実を慎重に調査し、かつもろもろの典拠を勤勉に対照して、予の全力を尽してなし遂げるであろうということを疑わないだろう。
 賞牌、写本、および碑銘などによって予は、このヴァンダーヴォットタイムイティスの町がその創立の時からずっと現在と少しも異ならない状態において存在していた、ということを断言することができる。しかしその創立の年代については、数学者がおりおり代数のある公式において用いなければならないところのあの不定の断定の一種をもって、語ることができるに過ぎないことを遺憾に思う。かくてその年代がどれくらい遙かの昔であるかということについては、ただ挙示し得るいかなる時代よりも確かに古いと言い得るのみである。
 ヴァンダーヴォットタイムイティスという名の由来に関しても、同じく遺憾ながら予は途方に暮れざるを得ないことを告白する。このデリケートな点に関するあまたの説――そのあるものは明敏であり、あるものはなかなか博識であり、またあるものは全くその逆であるが――の中で、予は満足なものと考えられるものを一つも見出すことができない。おそらくグログスウィッグの意見が――それはまたクラウタプレンティの意見とほとんど一致しているが――慎重に考えてみてまずよい方であろう。――それは次のようである。――※[#下側の右ダブル引用符、U+201E、188-9]Vondervotteimittiss ―― Vonder, lege Donder ―― Votteimittiss, quasi und Bleitziz ―― Bleitziz, obsol : pro Blitzen.”この由来は、実を言えば、町会議事堂の塔の頂上に明らかに残っている落雷の跡によってますます本当らしく思われる。しかし予はこのような重大な問題について言質を取られるのを好まないから、このことについて知りたいと思われる読者にはドゥンデルグッツの※[#下側の右ダブル引用符、U+201E、188-…

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