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おれは二十面相だ
おれはにじゅうめんそうだ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「おれは二十面相だ/妖星人R」 江戸川乱歩推理文庫、講談社
1988(昭和63)年9月8日
初出「小学六年生」1960(昭和35)年4月~1961(昭和36)年3月
入力者sogo
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2018-10-21 / 2018-09-28
長さの目安約 107 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

消えうせた大学生
 五月のある日のこと、麹町の高級アパートにある明智探偵の事務所へ、ひとりの老紳士が、たずねてきました。
 ふさふさとした白いかみを、オールバックにして、白い口ひげをはやした、やせがたで、背のたかい、りっぱな老紳士です。
 この人は松波文学博士で、あるお金持ちがたてた古代研究所の所長なのですが、西洋の古代のことをしらべている、有名な学者でした。
 明智探偵は、ある会で松波博士とあったことがあるので、知りあいのあいだがらでしたが、その有名な老学者が、とつぜんたずねてきたのです。
 とりつぎに出た小林少年は、松波博士と聞いて、ていねいに、応接室にあんないしました。
「明智さん、わたしのつとめている古代研究所に、みょうなことがおこりましてね。きょうは、あなたのお知恵をかりようとおもって、うかがったのです。」
 松波博士はいすにかけると、すぐにそう口をきりました。
「みょうなことと言いますと?」
 明智がたずねますと、博士は話しはじめました。
「古代研究所は、ついこのごろ、世界にたった一つという、古代エジプトの経文を書いた巻き物を手に入れたのです。わたしたちの研究所の木下博士が、イギリスで見つけて買って帰ったもので、そのことは新聞にも出ましたから、ごぞんじかもしれませんが、お金にかえられない、世界の宝物です。
 ところが、この巻き物には、おそろしい、いいつたえがあるのです。それのおいてある部屋には、なにかしら、ふしぎなことがおこるというのです。イギリスでも、いろいろ気味のわるいことがおこったらしいのですね。それで、この巻き物の持ち主がこわくなって、売る気になったのです。
 木下さんは、この宝物を、日本のお金にして、たった三十万円ほどでゆずりうけてきたのですが、ほんとうは、その何倍、何十倍の値打ちのものです。
 さて、この巻き物を、研究所のエジプトの部屋へおさめたのですが、すると、たちまちおそろしいことがおこりました。
 きのうのことです。研究所へひとりの大学生がやってきました。そして、エジプトの部屋においてあるミイラの棺を見たいというので、部屋にはいることをゆるしたのです。
 すると、この大学生が、部屋にはいったまま、消えてしまったのです。人間がひとり、とけてなくなってしまったのです。なにも、ふんしつしたものはありません。あの巻き物も、ちゃんと、もとの場所にありました。」
 明智探偵も、そばで聞いていた小林少年も、このふしぎな話に、すっかりひきつけられてしまいました。
「その大学生は、だれもしらないうちに、出ていったのではありませんか。」
 明智がいいますと、松波博士は、頭をふって、
「いや、そんなことはできません。赤井という、年よりの小使が、ちゃんと見はり番をしていたのですからね。赤井君は、たった一つのドアの外に立っていて、一度も、動かなかったので…

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