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![]() あたらしきふじんのだんせいかん |
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作品ID | 56962 |
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著者 | 伊藤 野枝 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」 學藝書林 2000(平成12)年5月31日 |
初出 | 「新婦人 第四年一月之巻」1914(大正3)年1月 |
入力者 | 酒井裕二 |
校正者 | Butami |
公開 / 更新 | 2019-09-16 / 2019-08-30 |
長さの目安 | 約 4 ページ(500字/頁で計算) |
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世間には可成に女を知りぬいたつもりで、かれこれと女を批評する男が尠くないやうですが、それが大抵九分九厘迄は当つてゐないので、こちらの耳へは寧ろ滑稽に聞える位なものです。男は独りよがりを楽むものと思はれます。
男は寛大で、万事が大まかです。随つて綜合的な点に於て女は男に及ばないでせうが、部分的な細かい洞察は、とても女に勝てますまいと思はれます。
女は綜合的で無いかわりに部分的に深刻です。男は綜合的ではあるが、如何にも粗笨で浅薄です。何を為るにも独り合点で、片端から独断でやつてのけます。男の為ることは馬鹿々々しい程無邪気に女には見えます。
浅薄な、手妻師のやうな男が其処等中に転がつてゐますが、左様云ふ男が女に対する場合、能きる丈けの猫を被つてゐます。けれども其の猫の皮は何んでも無く観破れるのです。直とお底が知れるのです。
処が、実を云ふと、猫を被ぶるのは女の方がもつと/\ひどいのです。ひどいのですが細心な注意を払つて男に対する城塞を固めてかゝるので、男には容易にそれと悟れません。夫れだけ女は罪が深いのでせう。それだけ男は無邪気なのでせう。
男は穴だらけ隙だらけです。女は男のその弱点を如何様にも利用することは容易です。然しそれは最も卑劣な行為と言はねばなりません。弱点は無論女にもあるのですから、弱点と弱点とは互に調和して行かなければならないことで、弱点を包み隠し合ふ必要が無いと同時に、弱点を利用すると云ふことは罪悪でせう。
水商売の女は巧に男の弱点を利用してゐます。水商売の女で無くても、世間には斯んな種類の女が沢山あります。
男を怖いもの、厳めしいものゝ様に思ふのは、世間知らずの娘時代に多いことで、人の妻となり母と成つた女の眼には、男は怖いものでも厳めしいものでも無く、親しみ易い与し易い無邪気なおめでたいものとしか映らないのです。其の証拠には、愈々突きつめた場合になって[#「なって」はママ]、男は意気地が無い程早く折れますが、女は然う云ふ場合に徹頭徹尾自分の強さを示す事の能きるものです。いざと云ふ場合此方に強く出られて、高飛車に強勢を執る男はめつたに有るものでありません。大抵はコロリと参つちまひます。
女が男に服従しなきやならないと云ふ理由は成り立ちません。たゞ永い日本の習慣が女の独立を妨げたが為めに、女は自分の生活の保障をして呉れる男に対して一歩を譲つて相当の敬意を払ふと云ふ丈けのものです。そこへ男が付け込んで奴隷扱ひにし、女が盲従的に甘んじてその屈辱を受けると云ふのは訳の解らないことです。
軈て女の独立の道が確立されたら、この弊は除れて了ふでせうが、其処に到る迄の女の自覚は今の処仲々容易なことではありますまい。
婦人問題は担ぎ上げられても、世間一般の婦人はウンともスンとも言ひません。夫れもその筈、担ぎ挙げる人達が男も女も、真個に覚醒して見…