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新刊紹介
しんかんしょうかい
作品ID57049
副題〔伝説の時代〕
〔でんせつのじだい〕
著者伊藤 野枝
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」 學藝書林
2000(平成12)年5月31日
初出「青鞜 第三巻第九号」1913(大正2)年9月号
入力者酒井裕二
校正者かな とよみ
公開 / 更新2022-03-30 / 2022-02-25
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


伝説の時代 (タマス、ブルフインチ著[#改行]野上彌生子訳) 定価弐円 尚文堂発行

 七百頁に近い大部なもので、全部四十一章に別れてゐて古代希臘羅馬の神話東方北方の伝説が残らず集まって[#「集まって」はママ]ゐる。
 訳しぶりが如何にも自由で平易でちつともギコチないところがなくて読んで行くうちに、やさしいお母さんのお話でも聞いてゐるやうな気持になる暖か味を感ずる。活き/\した自由な拘束のない古代の神々や英雄ののんびりした、何処となくせまらぬ、動作がはつきり浮んで来る。そしてせゝこましい自分達のいまの生活と遠くかけはなれた、それ等の物語りがよんで行くものゝ心持を、だん/\にその純なところに引き込んで行く。
 装幀も気のきいた、気もちのいゝものだ。中にはさんだ写真版にも、ロセツチのパンドーラなどのいゝのがあるが、それよりも、章の初めにはさんだ挿画がこの物語りの本の挿画にする為めに集められたかのやうに、しつくりと、あてはまつてゐて、すこしもいやな感がしない。すこしも目障りにならない。兎に角全体として、念の入つた、ちつともいゝかげんでなく何処までも注意のとゞいてゐる点がうれしい。
 それに、おしまひに神話の系譜や索引までも丁寧につけてあるのは、あくまでも行き届いた仕方だと感心した。この大部な面倒な仕事を家事の忙しいあひまで、立派に完成せられた、訳者の忍耐と、努力には本当に敬服の他はない。
[『青鞜』第三巻第九号、一九一三年九月号]



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