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読者諸氏に
どくしゃしょしに
作品ID57113
著者伊藤 野枝
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」 學藝書林
2000(平成12)年5月31日
初出「青鞜 第六巻第一号」1916(大正5)年1月号
入力者酒井裕二
校正者かな とよみ
公開 / 更新2021-09-16 / 2021-08-28
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 私は自分で編輯するこの雑誌を、出来る丈け、立派なものにしたいと思ひます。けれども如何に、私が自惚れて見ましても本当に貧弱な内容しか持つことが出来ません。私一個の微力では勿論どうしても読者諸氏を満足させるやうな大家の執筆を乞ふことは出来ません。目次にならんだ人達はまだ世間の表に立つてゐない人の方が多数を占めて居ます。私は毎号々々かうして貧弱だとかつまらないとか云ふ非難を耳にしながらも何時もねうちのない雑誌ばかり編輯して居ります。けれども私の考へではそれにも相当の理屈はつくのです。私自らはこの雑誌自身に単なる苗床としてより以上の何の価値をも求めやうとはしません、私はこの雑誌を引きつぐ際に、一切の規則を取り去つて無規則無方針、無主義無主張と云ふことをお断はりしました。主義の欲しい方規則のなくてはならない方は各自におつくりなさるがいゝ。何の主義も主張もない雑誌を凡ての婦人達に提供いたしますから各々に自由勝手にお使ひ下さい。お用ひになる方の意のまゝに出来るやうに雑誌そのものには一切意味を持たせません。と云ふことも其の際に申ました。何卒この貧弱な雑誌を覗く丈けの方でもこの事を御承知下さいまし、この雑誌は苗床としての価値より他には何にもありません。此処に芽を出した苗がどんな処にうつされ、どの苗がどう育つてゆくか――未成品――と云ふことに興味をもつて下さる方に初めてこの雑誌は雑誌自らの存在の意義を明らかにするのです。私はかう云ふ負け惜しみな理屈を楯に何と非難されても相変らず貧弱な雑誌を倦きずにこしらへてゐるのです。
――編輯者――
[『青鞜』第六巻第一号、一九一六年一月号]



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