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編輯室より
へんしゅうしつより
作品ID57134
副題(一九一五年六月号)
(せんきゅうひゃくじゅうごねんろくがつごう)
著者伊藤 野枝
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」 學藝書林
2000(平成12)年5月31日
初出「青鞜 第五巻第六号」1915(大正4)年6月号
入力者酒井裕二
校正者雪森
公開 / 更新2017-03-30 / 2017-01-15
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

□毎号々々意に満たないものばかり皆様にお目に懸けなければならないのを本当に残念に思ひます。先月号はあんなに後れてしまひますし、今月はまた、私のからだが重くて少しも思ふやうに動きませんので毎日々々怠けてゐましたので思ふ程の原稿も書けずにこんなうすいものが出来ました。けれども頁の少いことが直ちに価値の如何にかゝはることにはならないと自分ながら苦しい云ひ訳をしてゐます。来月は少し実のある長いものを書く気でゐます。平塚さんにも野上さん、哥津ちやんにも書いて頂かうと思つてゐます。
□何時からも何時からも気がついてゐまして一人で私はもがいてゐます苦しくてたまらないのです。このやうな単調な雑誌が出来上るを見る度びに――。私は今年の八月号をやすんで九月の紀念号からすこし変つたものにしたい、もつとひきしまつた、むだのないものにしたいと思つてゐます。種々の計画もひとりひそかにたてゝゐます。そしてそれには私一人の努力でなく皆様の努力にまたなければならないのは云ふまでも御座いません。
□一つの些細な事、どんなつまらない原稿でも興味をもつて考へられないことはないと思ひます。どんな単調な生活をしてゐる人でも毎日の生活のきまつた事柄の外に何かしら違つたことを聞き、違つたものを見るにちがひはありません。思索と云ふことは何も重大なことばかりを考へるのではないのです。自分の事ばかりを考へるのでもありません。どんな些細なことでもどんな汚いものゝ上にも少しの相違もありません。私は本誌の読者諸姉がどのやうな日常生活を送りどんな思索を続けてゐられるかを知りたいために、――また私ばかりでなくすべて世間の人々の前に若き現代の婦人たちがその日常生活の真面目な自己批判を展いて見せることの必ず無意味でないことを思つてこれから毎号諸姉の日記、或ひは、小品だとか感想の断片と云つたやうなものに誌上をさきたいと思ひます。どんなに短かくてもかまひません、ハガキ一枚でもかまひませんから、お気の向いたときに御寄稿下さい。
□これは小説やその他のものとはちがつてありのまゝの心持を書きさへすればよろしいのですから少しも面倒な事などはないと思ひます。技巧だとか何とかは決して気になさるには及びません。たゞ書かれたそのことが真実でさへあるならば立派なものです。これにはおさしつかへの方は匿名でもかまひません。
□此の頃婦人矯風会の決議で見ますと、六年間を期して公娼を全廃すると云ふやうな項目が見えました。私はこの決議をした人たちの心持がどう考へても考へてもわからずにゐます。一体その人たちは本気で六年間かゝれば全廃することが出来るとの確信があるのでせうか、さうだとすれば実にこんな不明な人達はないと思ひます。私達が一寸考へて見た丈けでもさういふことが出来るといふことはとても出来ないと思ひますのに私のお母さんやお祖母さんと同年輩位のしかも相当に…

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