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![]() かいじんにじゅうめんそう |
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作品ID | 57227 |
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著者 | 江戸川 乱歩 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「江戸川乱歩全集 第21巻 ふしぎな人」 光文社文庫、光文社 2005(平成17)年3月20日 |
初出 | 「たのしい二年生」講談社、1959(昭和34)年10月~1960(昭和35)年3月 |
入力者 | sogo |
校正者 | 北川松生 |
公開 / 更新 | 2016-05-31 / 2016-03-04 |
長さの目安 | 約 19 ページ(500字/頁で計算) |
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1
あるおひるすぎのことです。
東京のまつなみ小学校のこうていで、みんながあそんでいました。
休み時間なので、一年生から六年生まで、かけまわったり、キャッチボールをしたり、きかいたいそうをしたりして、あそんでいたのです。
「あっ、ヘリコプターだっ」
だれかがさけびました。
「ほんとだ。ヘリコプターだ」
口々にさけびながら、みんな空を見上げました。
よくはれたまっさおな空に、ヘリコプターが小さくうかんでいました。高くとんでいるので、のっている人のすがたは見えません。
「あっ、びらだよ。びらをまいたよ」
また、さけび声がわきあがりました。
おお、ごらんなさい。ヘリコプターから、さあっと、こなのようなものがふき出したかと思うと、それが、きらきらとかがやきながら、ゆっくりおちてくるのです。
おちるにつれて、こなのようなものが、すこしずつ大きくなり、それが、空いちめんにひろがってきました。
「きれいだねえ。金色に光っているよ」
ほんとうに、そのひとつびとつが、金色に光っていました。
紙のびらではありません。なんだかへんなものです。
「あらっ、あれ、おめんだわ。金色のおめんよ」
女の子がさけびました。
そうです。それは、おもちゃやでうっている、セルロイドのおめんのようなかたちをしていました。
何百という金色のおめんが、空からふってくるのです。ちかちか、きらきらそのうつくしいこと。子どもたちは、こんなうつくしいけしきを見たことがありませんでした。
しばらくすると、そのたくさんのおめんが、こうていのあちこちにおちてきました。
みんなは、「わあっ」と、その方へかけ出し、あらそって、金色のおめんをひろいました。
その日、学校がおわると、おなじほうがくへかえる子ども七人が、一かたまりになって歩いていました。
みんな、金色のおめんをかぶっています。あのとき、おめんは、百いじょうもこうていへおちたのです。みんなが、おめんをもっていても、ふしぎはありません。
それは、セルロイドを金色にぬったおめんでした。
金色にぴかぴか光ったかおが、にやりとわらっているのです。くちびるのりょうはしが、きゅっと上へ上がった、三日月がたの口です。
「きみたち、そのおめんは、なんだか知ってるかね」
とつぜん、うしろで、声がしました。ふりむくと、せびろをきたおとなの人が、やっぱり、金色のおめんをかぶって立っているのでした。
「あっ、すぎ山先生だよ」
だれかがいいました。うけもちの先生ではないので、よくわかりませんが、なんとなく、すぎ山先生ににています。
「このおめんは、なんだか知っているかね」
すぎ山先生らしい人は、またたずねました。
「知りません。どうして、こんなものをまいたのでしょう」
五年生の石村たかしくんがいいました。
「おうごんかめんだよ」
「えっ、…