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栄養学小史
えいようがくしょうし
作品ID57318
原題A Short History of Nutritional Science
著者カーペンター ケニス・J
翻訳者水上 茂樹
文字遣い新字新仮名
入力者
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2016-01-05 / 2019-03-01
長さの目安約 153 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

その一(1785-1885)


はじめに

 この論文は、私たちの学問(栄養学)の簡潔な歴史入門書であり、教科書に使えるように計画された4編の招待論文の第1編である。スペースが限られているので、私は栄養に必要な物質の発見や、栄養素を供給する食品の研究に焦点をしぼることにした。栄養学は分析化学および一般生理学の発展に大きく依存してきたが、これらの歴史書は既に存在している。
 簡潔に取り扱うことによって多数の著者や論文に言及することもできたが、そうすると読みにくくなってしまう。したがって、私は新しい土地を切り開いて他の研究を刺激したようなトピック(*:パラダイム・シフト参照)を選ぶことにした。この場合、トピックは著者によって異なることになるであろう。
 私は研究をその当時の研究者の観点から眺めるために年代順に取り扱うことにした。これは現在の考えによって過去の研究を時期尚早に説明しないようにするためである。多くの場合、歴史的なオリジナル論文を引用することにした。しかし、多くの文献を利用できるので入手が容易な総説も引用した。書籍や長い論文から引用するときには、引用箇所のページを明記できるように本誌の編集者から特別の許可を頂いた。

化学革命

 1785年以前にも、多くの学者たちは我々の食べている食物が体内でどのように使われているかを考察し発表してきた。しかし、この問題を定量的に科学的に検討するには、18世紀末にフランスでいわゆる“化学革命”が起きて、多くの元素が同定され、化学分析の方法が発展するのを待たなければならなかった。このような一般化には、後で述べるような例外(訳注:壊血病の研究)があった。現代の研究者たちは18世紀末にこの“革命”を起こした科学者たちの研究についてよく知らないし、彼らの能力をしかるべく評価していない。しかし彼らは指導者であり、“動物化学の暗い森”に進出した点で同時代の人々の先駆者であった。
 たとえば1785年にベルトレがフランス科学アカデミーに提出した発見は重要な意味を持っている。彼は動物物質(*:タンパク質)が分解して発する気体はアンモニアであり、3容量の水素と1容量の窒素からなり、重量では約17%の水素と83%の窒素からなることを見いだした(1)。現在の値は17.75%および82.25%である。これは感激すべき仕事である。この時代に入手できた装置だけを使って、今日の研究者たちの多くはこの研究を繰り返すことができないであろう。
 動物物質に窒素が含まれ、砂糖、デンプン、脂肪には窒素の含まれていないことが、他の人々によって確認された。しばらく前から、小麦粉には腐らせると動物物質と同じようにアルカリ性の蒸気を出す物質(グルテン)の含まれることが知られていた。これ(グルテン)があるので小麦は優れた食物なのではないか、新しく利用されるようにな…

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