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グロスターのふくやさん
グロスターのふくやさん |
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作品ID | 57323 |
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原題 | THE TAILOR OF GLOUCESTER |
著者 | ポター ビアトリクス Ⓦ |
翻訳者 | 大久保 ゆう Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2015-07-28 / 2018-06-17 |
長さの目安 | 約 20 ページ(500字/頁で計算) |
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[#挿絵]
こりゃ 1まい かがみでも 買って
ふくやを 2,3にん よんでみようか。
――リチャード3せい
フリーダちゃん
おとぎ話が 大すきだけど、 ねこんでいる あなたのために、 このお話を まるまる 作りました ―― まだ だれも 読んでいない 新しい お話です。
このお話の いちばん ふしぎなところは ―― わたしが グロスターで 耳にした ほんとの話だと いうことです。 ふくやさんのこととか、 チョッキのこととか、 「糸が 足りない」のところとかはね!
1901年 クリスマス
[#挿絵]
つるぎと カツラが まだ あって、 コートの すそが 長くて、 花がらの ひらひらの ついていた むかし、 男の人も ひだや ふさの ついた きらびやかな きぬの チョッキを きていた むかしのこと、 グロスターに ふくやさんが おりました。
[#挿絵]
その人は、 町の 西門に かまえた ちいさな お店の まどぎわで、 さぎょう台の上に あぐらを かいて、 朝から ばんまで すわっていました。
日の あるうちは、 ずっと ぬったり 切ったり、 いろんな ぬのの 生地を ぬいあわせておりまして。 サテン、 ポンパドゥール、 ラストリン、 生地にも それぞれ かわった 名前が あって、 どれも このお話の おこったころには、 とても ねうちの あるものでした。
[#挿絵]
ところが ご近じょの おきゃくさんには 上ものの きぬを ぬうのに、 そのひとは とてもとても まずしくて ―― そのこがらな メガネおじいさんは、 やつれた顔、 まがったゆび、 すりきれた 上下のふくと いうありさま。
ぬいとりの ぬのに 合わせて、 むだなく ふくの かたちを たち切りましたから、 さぎょう台の上に ちらかるのは、 ほんの少しの 切れはしだけ ――「はしきれすぎて、 どうにもならない ―― ネズミの チョッキには なるくらいだ。」と ふくやさんは 言います。
[#挿絵]
クリスマスも 近づいた ある さむさも きびしい日、 ふくやさんは コートを 作りはじめました ―― パンジーや バラの ししゅう入りの さくらんぼ色した うねおりの きぬの コートと、 クリーム色した サテンの チョッキ ―― ゴーズと 緑の ウーステッドの シニョール糸で かざりつけられていて ―― グロスターの 町長のための あつらえものです。
ふくやさんは はたらきづめで、 ひとりごと。 きぬを すんぽう 取って、 くるくる 回して、 大ばさみで かたどおりに 切りととのえていきました。 さぎょう台じゅうに、 さくらんぼ色の 切れはしが とっちらかります。
「あまりは なし、 たち合わせも ばっちり、 それ あまりは なしだ、 あっても ネズミの かたかけ、 小ものの …