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![]() はるのししゅう |
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作品ID | 57429 |
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著者 | 河井 酔茗 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「ふるさと文学館 第三三巻 【大阪Ⅱ】」 ぎょうせい 1995(平成7)年8月15日 |
初出 | 「紫羅欄花」東北書院、1932(昭和7)年 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2016-04-12 / 2016-03-04 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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あなたの懐中にある小さな詩集を見せてください
かくさないで――。
それ一冊きりしかない若い時の詩集。
隠してゐるのは、あなたばかりではないが
をりをりは出して見せた方がよい。
さういふ詩集は
誰しも持つてゐます。
をさないでせう、まづいでせう、感傷的でせう
無分別で、あさはかで、つきつめてゐるでせう。
けれども歌はないでゐられない
淋しい自分が、なつかしく、かなしく、
人恋しく、うたも、涙も、一しよに湧き出た頃の詩集。
さういふ詩集は
誰しも持つてゐます。
たとへ人に見せないまでも
大切にしまつておいて
春が来る毎に
春の心になるやうに
自分の苦しさを思ひ出してみることです。
詩集には
過ぎて行く春の悩みが書いてあるでせう。
ふところ深く秘めて置いて
そつと見る詩集でせう。
併し
季節はまた春になりました。
あなたの古い詩集を見せて下さい。