えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
![]() みずのうえ |
|
作品ID | 57436 |
---|---|
著者 | 安西 冬衛 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「ふるさと文学館 第三三巻 【大阪Ⅱ】」 ぎょうせい 1995(平成7)年8月15日 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2016-06-02 / 2016-03-04 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
中央公会堂の赤煉瓦
緑青色の高裁のドーム
中洲の葉柳をかすめて
とび去る水中翼船の渦巻から
ムツとするような水苔の匂い。
ついさつきまで
ランチ・タイムを愉しんでいた
BGやホワイト・カラー達も
みんな今は引き揚げていつてしまい
あとには
濡れ手で銭勘定の
貸ボート屋ののどかな浮世哲学。
上げ潮にむつかしい家裏をみせた川魚料理の
昼もほのぐらい煤天井に
うららかな水かげろうの文
軒場に張り出した
巣箱のようなエア・コンの上に
かえりそびれた
新聞社の伝書鳩が
ちよこなんと一つ
そろそろ夕刊の
降版の時間だというのに。