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十二花の雪
じゅうにかのゆき
作品ID57458
著者中谷 宇吉郎
文字遣い新字新仮名
底本 「中谷宇吉郎集 第一巻」 岩波書店
2000(平成12)年10月5日
初出「東京朝日新聞」1936(昭和11)年2月2日
入力者kompass
校正者砂場清隆
公開 / 更新2017-02-19 / 2017-01-20
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 六華豊年の兆という言葉がある位、雪の結晶といえば六花ときまっているように思われているが、中には十二花のものもある。第2図の写真は一九三四年の冬十勝岳で撮られた十二花の結晶の一例であるが、その外に、三花四花などの結晶も案外珍しくない。
 十二花の雪は実は天保三年刊行の土井利位の『雪華図説』に立派な摸写が出ている。第1図はそれを転載したもので、長短二種の枝が交互に出ている点に注目すべきである。この結晶は六花二個が重って出来ているので、土井利位の観察の正当であったことは第2図をよく見れば分る。
 もっとも虫目金で見てただ摸写しただけであるから、それだけでは科学的価値がないという人があるかも知れない。しかし、自然のある珍しい現象を発見することは、案外科学的研究の端緒ではなくて、その窮極であるのかも知れない。それは科学の目的の定義が決まるまでは分らないことなのである。
(昭和十一年二月『東京朝日新聞』)
[#改ページ]
[#挿絵]
第1図

[#挿絵]
第2図



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