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「先生を囲る話」について
「せんせいをめぐるはなし」について
作品ID57461
著者中谷 宇吉郎
文字遣い新字新仮名
底本 「中谷宇吉郎集 第一巻」 岩波書店
2000(平成12)年10月5日
初出「寺田寅彦全集 第十六巻」月報「寅彦研究第十六号」岩波書店、1938(昭和13)年1月10日
入力者kompass
校正者砂場清隆
公開 / 更新2018-11-28 / 2018-10-24
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 前に「先生を囲る話」を書いた時、その中に所々御弟子達の言動を点景人物の意味で入れておいた。ところがあの話は実は先生のいわれた言葉が重大なので、それは一段下げて書いておいた。しかしそれだけでは体をなさぬので、当時の先生を囲る周囲の気分を現わすために一々の話にちょっと前置きを書いたので、その点あの「話」には筆者のモンタージュが多少施してあることを御断りする。しかし先生の話された言葉自身は大体において当時の日記に残っているものだけしか採用しなかったので大した誤りはないつもりである。
 例えばこの話の三三、油絵の話についていえば、あの前置きでは今理研に居るS君が先生に油絵の道具を買いにつれて行って貰って帰りに風月で珈琲の御馳走になったので、皆も羨ましがって油絵を始めたという風になっている。しかし矢島氏が先生の日記から調べられたところによると、それは大正十二年七月十二日のようである。ところがある晩先生の応接間へ伺ったらS君が油絵を持って先にきていたというのは大正十三年十一月一日のことである。しかし肝心なのは「空は青、樹は緑と思って絵を描いてはいけない。……」以下の先生の油絵論なので、その前書きはそれほど厳密に考証的には書かなかった。それからあの話の中、最後の節に先生がモデルを描かれたという話がある。あれもそれより前の話とは別の機会に話されたのをあそこへくっつけたのであるが、モデルを描かれたことは事実でありその絵も私は見た。要するにこの「囲る話」にはその程度のモンタージュはしてあることを御断りする。
(昭和十三年一月『寅彦研究』)



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