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雪協議会の報告
ゆききょうぎかいのほうこく
作品ID57873
著者中谷 宇吉郎
文字遣い新字新仮名
底本 「中谷宇吉郎集 第二巻」 岩波書店
2000(平成12)年11月6日
初出「東京朝日新聞」1939(昭和14)年3月29日
入力者kompass
校正者砂場清隆
公開 / 更新2020-12-18 / 2020-11-27
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 万国雪協議会というものがあって、世界四十何か国の学者を会員として、盛んな活動をしようとしている。その第一回総会が四年前に英国のエジンバラにあって、その報告がやっとこの頃出来上った。八百何十頁という部厚なもので、数百の論文が載っている立派なものである。
 一通りざっと目を通して見て驚いたことは、その中にある論文のうちで、ロシアのものが頭抜けて優れていたことである。英米独各国のかなりの名の知れている学者の論文でも、ロシアの連中の研究に較べると大分見劣りがする位であった。
 雪協議会といっても、氷や凍結の問題も含めているので、例えば、レニングラードの低温科学研究所長の河川の凍結に関する研究などは、その中でも特に光輝をはなっているように見えた。ネバ河における二十年の観測と、実験室内における純物理学的研究と相俟って、遂にロシアやシベリアなどの極寒地で水力電気発電所を作りあげたのだから、敵ながら天晴れというより仕方がない。
 海の流氷に関する研究の優れたものは見当らなかったが、特に発表を差し控えているのか、それでなくても、あれだけの人と組織とを持っておれば、わけなくその問題も解決されそうである。
 我が国でもこの冬のようにちょっと流氷が多いと、北海道と樺太の連絡が遮断されてしまうような状態で、いつまでも安閑としているわけにも行かないだろう。
(昭和十四年三月『東京朝日新聞』)



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