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学問の独立と東京専門学校の創立
がくもんのどくりつととうきょうせんもんがっこうのそうりつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出「早稻田學報 第五號」早稻田學會、1897(明治30)年7月31日
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2018-10-21 / 2018-09-28
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

〔社会への初陣〕
 諸君、今日は東京専門学校にとって最も喜ぶべき卒業式、且つ十五周年の祝典をも同時に挙行するというこの喜ぶべき式場に臨んで、卒業生諸君に向って一言陳ぶることを得るは私の大いに喜ぶところであります。しかしながら既に鳩山〔和夫〕校長の式辞とかあるいは近衛〔篤麿〕公爵の演説とかあって、諸君に向って大抵同じようなことを繰返された様でもあり、且つ随分暑い処に長く時を費やすことは甚だご来臨の諸君に対して御気の毒にも存じますから、ごく簡単に卒業生諸君に向って一言陳べまして、次にこの十五年の祝典について聊か私の考えを吐露しようと思います(拍手)。
 卒業生諸君は数年勉強の結果、今日この名誉ある得業の証書を貰って始めて社会に御出になるのは、まずいわば複雑なる社会に於て勇戦奮闘する初陣である。ところがなかなか初陣というものはよほど六ヶしい。どうも諸君が向うところには種々の敵が沢山ある。種々の伏兵にも出会う。いま近衛公爵の御話の通りに道徳の腐敗あるいは社会の元気の沮喪などという、これは最も恐るべき敵である。既に出陣しない前に敵が現れて来ているのだ。この敵に向って諸君は必ず失敗をする。随分失敗をする。また成功があるかも知れませぬけれども、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打勝たなければならぬ。たびたび失敗するとそれでこの大切なる経験を得る(拍手喝采)。その経験に依って成功を以て期さなければならぬのである。ところでこの複雑なる社会の大洋に於て航海の羅針盤は何であるか。学問だ。諸君はその必要なる学問を修めたのである。しかしながらなかなかまだ初歩なのである。これから先すべてこの社会に現れて航海する航海者は羅針盤と「バロメートル」を決して離し得ないものだ。その「バロメートル」は何である。学問である。すべての仕事をなすと同時に手に巻を持っておらなければならぬ。本を持っておらなければならぬ。これを止めたならば誰でも直ちに失敗をして再び社会に勢力を得ることの出来ないようになってしまうのである。まずこの一言を以て諸君を戒めておきます(大喝采)。

〔創立についての理想〕
 それから東京専門学校の十五周年の祝典ということについて少しく既往に溯って申します。これは今市島〔謙吉〕君から大略の報告がありましたけれども、まだ尽さぬところがあるに依って、且つ幸いここには文部大臣あるいは近衛公爵その他大学の校長、教育家、文学家、宗教家、あるいは政治家、どうも見渡すとまずおよそ社会に於てあらゆる勢力のある御方が御集まりになったので、こういうことは容易にないことでありまするし、また学生諸君も十五年前のことはご存知ないこともあるかも知れませぬに依って、この学校の創立についての私の理想を御話し致し、そうしてこの学校が如何なる勢力を社会に持ったか、またその間如何なる境遇を経て来たか、そうして…

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