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〔憲政本党〕総理退任の辞
〔けんせいほんとう〕そうりたいにんのじ
作品ID57984
著者大隈 重信
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出「憲政本党党報 第八号」1907(明治40)年2月
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2019-01-20 / 2018-12-24
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 諸君、今日は憲政本党の大会に際しまして、諸君に向って私の意見を吐露することは最も喜ぶところであります。例年の大会に於ては誠に寂寥でありまして、少しく物足らぬような感じを起しました。然るに当年の大会に於て、諸君が党に対する熱心の度がよほど増したと存じますのであります。あるいは党則の改正、あるいは党勢の拡張、あるいは宣言に於ける種々の意見に付いて、盛んなる討論があった。これは皆諸君が党に対する赤誠の致すところであると信じまして、深く私は喜ぶのであります。

〔戦後の国勢と政党の責任〕
 さて戦後に於ける日本の国勢は隆々として旭日の昇るが如くなると同時に、国民の責任は国勢に比例して益々重きを加えるのであります。国家のために、君国のために、公に奉ずるところの党派はかくの如き時機に於て大活動なかるべからず。然るに諸君、我が国の前途は甚だ遠し。既に世界の強国となったが、将来に於ける日本の世界に於ける地位は、なかなか一朝にして定まるものではないのである。国が盛んになれば、なるほど国際的関係は益々困難になるもので、東洋の一大強国として世界の国際場裡に重きをなさんとするには、まだなかなか前途遼遠である。ことに欧羅巴風の思想は、諸君のご承知の通りに、世界は白人の世界と思うておる。白人以外の勃興に対しては頗る奇異の感を抱いておるのである。それで苟も乗ずべき機会があらば、あるいは猜疑心、嫉妬心、もしくは人種的感情、宗教的感情とにより、我が国の勃興を妨げんとするものが起らないとは言えないのである。かの最も日本の友国たるところの対岸の「カリホルニャ」に於ては、今日既に業に日本人排斥が起っておるのである。なかなかこれは重大な問題である、国家として、民族として、世界的に将来活動する上に付いてはこれは重大な問題である。この問題が解決されぬ以上は、日本が世界に於て、最も強大なる国家、最も強大なる民族と同等の地位を占むることはなかなか出来ないのである。それで諸君の任は甚だ重いといわねばならぬ。
 かくの如き重大なる責任はこれを誰が持つかといえば、無論諸君である。諸君は国民の代表者である。政党そのものはかかる国利民福の発展を目的として存在しておるものである。然らば我々の地位は決して権力によって成立つものではない。国民の意思に依って成立つものである。我々の土台が国民である。将来に於ける我々の立脚地は国民である。然らば国民の輿望を収むるや否やということは最も大いなる問題である。徒に多数を頼み、強を頼んで私を営むという訳ではない。強を頼んで政権に近づくという訳のものでもない。我々は国家に対し、ことに主権者に対して大責任がある。その責任を全うするは、我々の任務である。かく私は信ずるのである。それ故に、昨年の総会に於て私は第一に選挙権の拡張を主張したのである。これは憲法の大義から割出した事である。我々の第…

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