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外交の方針
がいこうのほうしん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出第十囘帝國議會衆議院での演説、1897(明治30)年2月16日
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2018-09-06 / 2018-08-28
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 諸君、今日私はこの神聖なる衆議院に向って口を開きますことは初めてであります。諸君と此処に御会い申して私の説を述べることは、甚だ私の光栄とするところであります。先日予算委員会に於て、色々外務省の費用について質問が起りまして、その時に外交の方針を聴きたいということでありましたが、この外交の方針というものは、直接に予算に関係しない、ただ間接に予算に関係するものでありますから、これはいずれ本会に於て述べようと思いまして、委員会に於ては、直接なる事柄のみに答弁を致しておきました。それ故に今日は外交の方針について、大体の御話を致そうと思います。

〔国是を一定不動連続とし、大きな規模で外交計画を立てるべきこと〕
 諸君、ご承知の通りに第一議会以来、たびたび国務大臣が議会に向って外交は開国の主義である、あるいは開国進取であるということを、たびたび述べられた様に存じております。外交の方針――方針というよりは、ほとんど国是というものは明治初年以来一定不動のもので、今日並びに将来に於てこの開国の主義、もしくは開国進取というものは、決して変ずるものでないと信じております。それで今日、私はこれに多少付け加えて御話し致そうと思います。明治の国是として現るるところの外交には、どういうことが大切であるかと言えば、維新の大詔にもあるが如く、万国と対立せんとするの大方針よりして、あらゆる国家の組織を変更しなければならぬということが起って、廃藩置県となり、幣制の改革と為り、徴兵令等その他種々の法律の改正、新規な法律を拵え、あるいは地方の議会、地方に自治を与える等、ついに憲法を制定さるるまでに至ったのであります。すべてこの国是、いわゆる開国進取、言い換えれば即ち万国と併立するという主義からして、日本は導かれ、文明に進み、ついに世界に重んぜられ、尊敬さるるということになったのであると存じます。
 ここに於てマ一層私は進んで申したいと思うのは、抑々この外交というものは随分困難なるものである。決して一国で以て左右することの出来ないものである。今日の外交というものは、よほど以前とは変化しているのである。諸君、ご承知の通りに、昔の外交というものは、ある一国と一国と、もしくは一国と数国、誠に区域の範囲が狭かったのであります。然るに今日に至っては、運輸交通の便が非常に発達し、世界の利害の関係がよほど密著して来たのである。それ故にこの外交の有様というものはよほど変化して来た。
 ご承知の通りに、昨年起ったところの英国と「ベネズエラ」との問題について見るに、英国は世界無比の大国で、世界に日の歿すること無き広大なる植民地を持っているという大国と、南亜米利加の「ベネズエラ」という小さな共和国との間に、境界の争議が起った。而かもその争点は全く沼池である。無人の地であるというが如き処に境界争いが起ったのである。諸君、御…

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