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平和事業の将来
へいわじぎょうのしょうらい
作品ID57988
著者大隈 重信
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出大日本平和協会会長推戴式での演説、1910(明治43)年1月
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2018-12-16 / 2018-11-24
長さの目安約 23 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

〔二十二年間の平和会員〕
 諸君、私はただいま報告された通り、この壮厳なる儀式の下に、会長に推薦せられたのであるが、私はこれに対して、何という言葉を以て御請けして宜いか、甚だ私は当惑した。全体、年内に江原〔素六〕先生、寺尾〔亨〕先生、その他の諸君が御出で下すって、今日の会のこと、同時にこの会に於て会長に推薦するから承諾しろ、ということのご相談に与って、その時に私は切りにご辞退をしたのである。自分はかくの如き大なる事業に、会長たる徳望もないのである。しかしながら、この会のために諸君の後えに従って及ばずながら微力は尽すが、会長はご免を蒙りたいということで再三ご辞退をした。今の御言葉は少し間違っているだろうと思う。悦んで御請けをしたという話であるが、決して悦んでではない。衷心恐縮したのである。再三ご辞退をしたが、なかなかご承諾がない。ご承諾がなくとも、拒む権利があるのだから拒んで宜いのであるが、あまり無碍に、我々が尊敬する数人の御方がご勧誘になるのを、直ちに拒絶するのは礼に非ずと存じまして、なお考えてみよう、ともかく今日は出席いたす、出席をして然る後に多数の御方がご勧誘になったならば、またその時のことに致そうというだけで、未だ確定しないのである。然るに、少しく外交的の、形式の変った、ほとんど悦びの下に会長に推薦されたというようなことであったのは、甚だ恐縮千万である。しかしながら、事ここに至って私がこれを避けるのは、私も男である以上勢いが無いようである。衷心恐縮に堪えぬ次第である。私が果して責任に堪えるや否やということは疑問である。しかしながら、私はほとんど二十二年前と記憶いたしているが、万国平和協会の会員の一人として署名している。その当時には、世界に名高い大政治家が沢山署名されておったのであるが、かくの如き名高い大政治家は、もはや今日は世界に存在していない。その当時おった人は、露西亜の大宰相であるゴルチァコフ、日耳曼大宰相であるビスマーク、英国の大宰相である所のヴィーコンスフィールド、グラットストン、あるいは亜米利加合衆国では、かつて日本にも御出でになったところのゼネラルグランド、数回大統領になられたが、この御方も署名されておった。その他世界に名高い政治家が、夥しく署名されておったのである。我々は世界に名も知れない、ことに世界の文明に触れて僅か半世紀しか経たぬところの、未だなんら世界的の大いなる事業を為したこともない者であったが、その当時帝国の外交官としておったために、その後えに署名するの名誉を得たのである。それ以来、衷心平和という事には注意しているが、全体、日本という国の地位が、世界の強大なる国の地位に大いなる隔たりが有り、且つ世界の国際団体に充分なる地位を占めない時に当っては、如何に志があっても、なんら世界の平和の上に働く機会が無かったのである。ところが、この…

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