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ニュートン
ニュートン
作品ID58021
著者石原 純
文字遣い新字新仮名
底本 「偉い科學者」 實業之日本社
1942(昭和17)年10月10日
入力者高瀬竜一
校正者sogo
公開 / 更新2018-12-25 / 2018-11-24
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

ニュートン祭

 イギリスのニュートンと云えば、科学の先祖のように尊ばれているのは、多分皆さんもご存じでしょう。毎年十二月の二十五日になると、大学の物理学の教室では、古い先輩の方々から学生までが集まって、ニュートン祭というものを行います。ニュートンの肖像を正面に飾って、赤い林檎の実をその前に盛って、それから先輩の思出話や、大学の先生方のおもしろい逸話を漫画に描いたのを写し出したり、賑やかにその夜を興じ過ごすのが例になっています。そしてニュートンへの思慕を通じて、みんな科学を知る喜びをしっかりと胸に抱くのです。
 十二月の二十五日は、ニュートンの誕生日に当るので、その生まれたのは一六四二年のことですから、今からはもう三〇〇年前になります。そんなに古い昔のことですから、その頃にはもちろん今日のような科学はまるで無かったと云ってよいのです。ところがニュートンは小さい時から科学的な頭をもっていて、器械をいじることなどが好きで、それからだんだん学問を勉強して、ついに科学の先祖と云われる迄になったのでした。
 イギリスでは国家に功労のあった偉い人達をロンドンのウエストミンスター寺院に葬ることになっているのですが、その光栄を荷なった人々の中には、政治家や軍人ばかりでなく、文学者や科学者などもたくさんにあります。これは学問に重きを置く上から当然のことでありますが、科学者のなかでニュートンの墓石がひと際目立って並んでいることは云うまでもありません。ニュートンは一七二七年の三月三十一日に八十四歳の高齢で逝くなったのでした[#「逝くなったのでした」はママ]。それから今日まで彼の名声は、ひとりイギリスばかりではなく、世界中のどこにもゆき亙っているのを見ても、その一生涯の仕事の大きさが想われるわけです。

林檎の伝説

 ニュートン祭になぜ林檎を飾るかといえば、それはニュートンが林檎の実の落ちるのを見て万有引力を発見したという有名な話があるからです。この話の由来について少しばかり説明してみますと、次の通りです。
 ニュートンの名はアイザックと言いますが、その生まれた故郷は、イギリスの中部にあるリンコルン伯爵領地のなかのウールスソープという小さな村でした。その村で小学校を卒業してから隣り町の中学校に入ったところが、家庭の事情で一年ばかり経って家に呼び戻され、農業に従事することになりました。それというのも父はアイザックの生まれる前に病気で死んでしまい、母親は一旦他家に再嫁したのに、そこでまた夫に死別してニュートンの生家に帰って来たからでした。しかしアイザックがいかにも学問好きなので、そのまま農業をさせておくのも惜しいと人々に忠告されて、ともかく中学校を続けさせることになったのですが、成績も非常によかったので、卒業後はもう少し学問を大成させようということになり、十八歳の折にケンブリッジの大…

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