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祭礼名彙と其分類
さいれいめいいとそのぶんるい |
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作品ID | 58031 |
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著者 | 柳田 国男 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「定本柳田國男集 第二十九巻」 筑摩書房 1964(昭和39)年5月25日 |
初出 | 「民間傳承十一號」1936(昭和11年)年7月 |
入力者 | フクポー |
校正者 | 津村田悟 |
公開 / 更新 | 2021-07-31 / 2021-06-28 |
長さの目安 | 約 6 ページ(500字/頁で計算) |
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現在我々の同胞の持傳へて居る生活ぶりの中から、どの程度にまで固有信仰のうぶな姿と、永い歳月に亙つた變遷の跡とを、窺ひ知ることが出來るかといふことは、日本民俗學の最も大切な力だめしであるが、私たちは是に二つの相助ける手段があると思つて居る。その一つは人の平常の言葉や考へ方の中に殆と無意識に保留して居る昔風の名殘を集めて見ることで、此方はよその國でも盛んに試みて居るが、なほ其中堅ともいふべき傳説といふ一群の資料が、斯んなにも豐富で又適切で、自由に利用し得られる國はさう多くあるまい。其上に更に第二の方法が日本には具はつて居るのである。上古以來の神祭りの方式は、中代の幾多の改定を經たとは言ひながらも、なほ間斷無く持續して、現にその推移のあらゆる段階に於て、過去の形態の各[#挿絵]或一つを守つて居るらしいのである。廣く且つ細かな比較といふものが、其變化の順序と系統とを、我々に學び知らしめる希望は大きい。私などの計畫は、遠近各地方の異同を詳かにする爲に、先づ若干の重要なる標目を立てゝ、其一つ一つの關係を考へて見ようとするのだが、何が重要な觀察點であるかを決するにも、出來るならば自分たちの判斷を用ゐずに、世間の向ふ所に從つて行かうと思つて居る。それで最初には祭禮の俗稱、即ち外部で勝手に呼んで居る名前が、大體に如何なる特徴に目をつけて居たかを、明かにしようとするのである。私の蒐集は不完全であるが、それでも全部を列記すると紙面を取り過ぎるので、たゞ二三の例を掲げるに止める。他日諸君の援助の下に、別に一册子として纏めて見たいと思ふ。
一、祭日又は季節に基づく名稱
節供祭 舊三月三日、播磨北條住吉神社
たのも祭 八月朔日、羽前三山神社等
つゆの祭 栗花落祭、飛騨栗原神社等
雪祭 正月十五日、信州新野伊豆神社
だら/″\祭 七日間の祭、下總千葉神社など
二、祭地祭場
是には明かに二通りの式がある。神屋御旅所等の社地以外の場所に、神幸を仰ぐものは別に名がある。常の御社の中で祭を仕へ申す場合には、新たに齋刺の式を行ふ例が多い。
おしめ祭 美作久米郡
榊祭 山形市
尾花祭 越後南魚沼郡
やたての神事 肥後阿蘇神社その他
三、物忌精進(祭前齋忌)
かいごもり祭 備中阿哲郡
忌除祭 筑前牧野神社
をこしや祭 攝津西宮神社等。近世では腰をつねり合ふといふのも、もとは睡眠を禁ずる趣意だつたらしい。即ち起しあひである。
寢祭 三河久丸神社など、起き出してはならぬ祭
戸たて祭 攝津歌垣村
四、神供と食物
團子祭 加賀米丸村神田神社
燒餅祭 因幡若櫻神社
はも祭 丹波篠山澤田八幡
えそ祭 大和八木その他
棒鱈祭 越後津川住吉神社
鯰…