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食料名彙
しょくりょうめいい
作品ID58032
著者柳田 国男
文字遣い旧字旧仮名
底本 「定本柳田國男集 第二十九巻」 筑摩書房
1964(昭和39)年5月25日
初出「民間傳承八卷二號~八號」1942(昭和17)年6月~12月
入力者フクポー
校正者津村田悟
公開 / 更新2021-08-08 / 2021-12-08
長さの目安約 61 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 序 諸君の食習採集手帖が整理せられたら、この語彙は又大いに増加することであらうが、それを促す意味を以て、先づ自分の今までに控へて置いたものを竝べて見る。此中には救荒食物は入つて居ない。又所謂いかもの食ひの食へば食へるといふものも入れてない。我々の目的は通常の生活を明かにするに在る故で、又昔食つたといふだけのものも入れない。
マスモノ 五穀の總稱として桝物といふ語がある(土佐方言の研究)。佐渡でもマスノモノ。米麥などの桝で量るもののことである。亥の子の日には桝の物を一切外に出さぬなどといふ。
キチマイ 吉米。よき米といふことをいつの頃よりか音でいふ。是糯米と區別する名といふのは(淡路)、後の解であらう。もとは常の日は粳米より惡いものを食つて居たからで、それには屑米又粟、稗の類も算へられたことゝ思ふ。
シャクノコメ 粳米をシャクの米といふことは四國ばかりで無い。鹿兒島縣十島の惡石島でも、粟に糯と粳との二種があり、後者をサコアハ又はシャアクともいふ(民族學研究二卷三號)。シャクは瓢のことで、「ひさご」といふ語から導かれて居る。是も桝物と同じに瓢で量つて使ふ粟の義と思はれる。器を以てはかるのは、人別に定量があつたことを意味する。即ちそれが桝の最初の用途である。
ヨネスル ヨネは農家では稻米だけに限つては居なかつた。たとへば信州遠山では、粟などの搗いて外皮を剥いたものもヨネである(方言六卷一號)。天龍川を越えて三河の北設樂郡でも、稗、麥共に皮をとつて精げることをヨネスルと謂ふ。ヨネしたものは家の中の物置に置く。籾のまゝなのは外のアラモノ庫に入れて置く。アラモノとは脱[#挿絵]せぬ穀物の總稱である。
イマズリ 籾で貯へて置いて、盆の頃になつて籾摺したものをエマズリ即ち今摺といふ(頸城方言集)。普通の食料には早くからまとめて摺つて置き、且つ色々の調合をしてすぐに炊けるやうにして貯へてあつたのである。
ケシネ 語原はケ(褻)の稻であらうから、米だけに限つたものであらうが、信州でも越後でも又九州は福岡大分佐賀の三縣でも共に弘く雜食の穀物を含めていふことは、ちやうど標準語のハンマイ(飯米)も同じである。東北では發音をケセネ又はキスネと訛つていふ者が多く、岩手縣北部の諸郡でそれを稗のことだといひ、又米以外の穀物に限るやうにもいふ土地があるのは(野邊地方言集)、つまりは常の日にそれを食して居ることを意味するものである。南秋田郡にはケシネゴメといふ語があつて、是は不幸の場合などの贈り物に、布の袋に入れて持つて行くものに限つた名として居る。さうして其中には又粟を入れることもあるのである。家の經濟に應じて屑米雜穀の割合をきめ、かねて多量を調合して貯藏し置き、端から桝又は古椀の類を以て量り出す。その容器にはケセネギツ、もしくはキシネビツといふのもある。ヒツもキツも本來は同じ言葉なのだが、…

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