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人狸同盟将に成らんとす
じんりどうめいまさにならんとす
著者柳田 国男
文字遣い旧字旧仮名
底本 「定本柳田國男集 第二十九巻」 筑摩書房
1964(昭和39)年5月25日
初出「郷土研究一卷八號」郷土研究社、1913(大正2)年10月10日
入力者フクポー
校正者津村田悟
公開 / 更新2019-07-31 / 2019-06-28
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 狸の化けた憑いたは皆大いなる寃罪で、永い間人と狸との感情を疎遠せしめて居た主因は「カチ/\山童話」であつたと云ふことが、此頃漸く明瞭ならんとするのは自他の爲慶すべき傾向である。狸は人間に於て渡瀬理科大學教授の外に、更に一箇の有力且つ善良なる同情者を得た。それは史蹟天然記念物保存會の戸川殘花翁である。翁は此頃タヌキ考の稿本を自費印刷して我々に頒ち、狸が我々に取つて百の愛すべきあつて一つの憎むべき無きことを理解せしめんと努力して居られる。而して猶全國の同志と聯絡を取つて不當なる誤解を匡正し、且つ今後は大に彼の隱れたる好意を利用しようとせられるのは、大體に於て我々の賛意を吝まざる處である。今些しく二團體間の不幸なる關係に就て史的考察を下すに、垂仁紀の足徂の侵撃以來我々が犬を以て最も信頼すべき附庸と認め、其軍事行動に對し注意深き[#挿絵]束を加へなかつたことが其大なる原因であるらしい。狸汁又は狸皮の首卷の如きは我々が是非とも彼等から要求せねばならぬ必需品ではない。毛筆の材料の如きは恐くは有害なる野鼠の髭を以て之に代へて一擧兩得し得るであらう。文明の國民はあまりトラジションに拘へられてはならぬ。願はくは現在の愉快なるアンタントコルジアルを一段と有效に擴張し、少々は養狸業の牧場でも各地に見るやうになつたならば農作の害敵どもは次第に退縮し、其結果として腹鼓は彼等のみの民族的遊戲では無くなるであらうと思ふ。



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