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キュリー夫人
キュリーふじん
作品ID58045
著者石原 純
文字遣い新字新仮名
底本 「偉い科學者」 實業之日本社
1942(昭和17)年10月10日
入力者高瀬竜一
校正者sogo
公開 / 更新2018-11-07 / 2018-10-24
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

女性と科学

 科学は今では女性の方々にとっても必要な大切なものであるということは、もちろん皆さんも知っていられるでしょう。なぜと云えば、ふだんの生活を科学的に合理的に行って、すべての物資を節約することは、つまりは国家に尽す重要な道であることは確かであるからです。
 西洋の大学では、どこへ行っても、男子の学生と肩を並べて教授の講義を熱心に聴き入っている女子の学生を見ない処は殆どありません。そして大学の研究室のなかにさえも多くの女性が働いています。我が国はいくらかそれとは事情を異にしていますが、それでも今では学位をもっている女性の方方がかなりに見られるようになりました。
 科学の上ですぐれた仕事を成し遂げることは容易ではありません。それでも熱情をこめて励みさえすれば、ある程度には到達することができるのです。しかも科学の歴史を繙いて見ると、女性でありながらすばらしい仕事をした人たちがそこにいくらも現れて来るのです。私はそのなかからただ一、二の例を採り出して見ましょう。その一人は、ロシヤの数学者として名だかいソーニヤ・コヴァレフスカヤです。彼女は一八五〇年に生まれ、ドイツで数学を勉強して、すばらしい研究をなし遂げ、後にスウェーデンのストックホルム大学の教授に任ぜられて、一八九一年に四十一歳で逝去したのでしたが、女流数学者として他に比類を見ないと称せられているばかりでなく、同時に文学者としても著名であって、その自伝は広く愛読されています。もう一人は、ここでお話ししようとするキュリー夫人で、その名は誰も知らないものもないほどですが、更にキュリー夫人の長女であるジョリオ夫人もまた母に劣らぬ科学上の大きな仕事を成し遂げたので、一層有名ともなっているのです。もちろんこのような成功は特別な場合でもあり、また偶々僥倖のある問題にゆき当ったという点もないわけではないでしょうが、しかし熱心に科学の仕事に携わらなければそこには到達できないのでありますし、何れにしても女性の名を科学の上で高からしめたことは確かであります。

故国ポーランド

 キュリー夫人の故国はポーランドであって、一八六七年の十一月七日にその首都ワルソーで生まれたのでした。その名をマリー・スクロドフスカと称しましたが、父はギムナジウム(中等学校)の教師で、物理学と数学とを教えて居り、母も以前に女学校を立てたことのある人であったというのですから、学問に縁故の深い家柄であったわけです。そしてこれがすでに後にマリーを学問の研究に携わらせる何かの動機となっていたのかも知れません。しかし母はマリーが五歳に達したときに不幸にして亡くなってしまったので、その後は専ら父の手で育てられました。ところで父はギムナジウムの教師ではあったのですが、その家計は決して豊かではなかったのに、おまけに非常にまじめな人であったので、学校に物理学の実験…

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