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青年の天下
せいねんのてんか
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2018-07-14 / 2018-06-27
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

この世界は諸君青年達の世界である
 健全なる精神をもち、健康なる体躯を有する青年であって、それで成功が出来ないということがあるものか。世の中には往々泣き言を述べる青年達がある。彼等はちょうど誰かがその前途を圧えているために自分が成功出来ないように言っているが、それは誤った考えである。ことさらに敵意でも持っていない限りどこに他人の成功を妨げるものがあろう。この世界は決してある少数の人の世界ではないのである。即ちお互いそれ自身の世界である。しかも今日既に成功している人々よりは、むしろこれから為すところあらんとしつつある諸君青年達の世界ではないか。
 既に自分自身の世界である。天は常に公平であって決して偏頗なことはしない。実力のある者には誰にでも成功の鍵を与えて、天下に覇を成さしめる。それにも拘わらず泣き言を並べたり悲観したりして、成功の出来ないのを他人の罪のように思っているものの迂愚は憐れむべしと言わねばならぬ。かかる徒輩はいわゆる人生の劣敗者、もしくはその候補者である。速やかに志を改め意気を練るに非ずんば、ついに一生を暗黒の裡に終るような不幸を見るであろう。
 人生は七転び八起きという。七たび転んでなお起き返ろうとするほどの勇気のあるものでなければ大事を為すに足らない。つまり反撥力の強い、ゴムのように弾力ある意志をもっている人間が勝利者となる。かかる人間は困難に遭えば遭うほど、その困難を打破せんとする意気が全身に漲ってくる。そしてあくまで自分の所信をやり通す。こんな人間でなければ駄目だ。温室の草花が嵐に会ったように、一度の失敗で直ぐ閉口垂れてしまう人間の成功の出来ないのは当然である。人生は決して平原ではない。山もあれば谷もあり、川もあり、坂もあり、峠もある。不撓不屈とはこれらの険難にうち勝つ精神を言ったものである。
 元来人間は人に頼って生きるはずのものではない。自分の道は自分で開いて行かねばならぬ。他人に頼ろうと思えばこそ、不運に遭う度に恨み言が述べたくなるのだ。閉口垂れるのは自分の罪である。劣敗者となるのは自分が弱いからである。少しも他人や社会の罪ではない。勇気を揮い反撥力を強め、堂々と活動せよ。成功の要諦は其処にある。我輩は泣いたり恨んだり、慷慨悲歌の声をあげるような人間は嫌いだ。彼等はいずれも意気地のない口先ばかりの人間だ。勝利者は黙って実行して行くものである。

我輩とてこれでまだ日本の青年である
 我輩もまた日本の青年である。年齢をいくつ取ったって青年の意気に変りはない。我輩は知っての通り佐賀藩に人と為った。そして維新の風雲の間に一廉の地位を占めて来た。けれども今日の我輩をもって功成り名を遂げた者としてしまうのはいけない。我輩は諸君の友達だ。この隆々たる国運に乗じて、やがて日本が世界第一の強国になるまでは決して耄碌はしない。
 佐賀藩には弘道館とい…

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