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吾人の文明運動
ごじんのぶんめいうんどう
作品ID58116
著者大隈 重信
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出「東京神田青年会館で開催された大日本文明協会の講演会における講演」1915(大正4)年10月24日
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2018-06-26 / 2018-05-31
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 諸君、本日は大日本文明協会のために諸君に一言するの機会を得たのを喜ぶ。我輩は実にほとんど五十年、即ち半世紀間、帝国文明のために全力を委ねておるものである。現在に於ても、また将来に於てもそのために畢生の力を尽して自己の生命の有らん限り、この運動を続けようと思う。我輩が大日本文明協会会長としてその名を表しているゆえんは全くこの我輩の志を表しているのである(拍手喝采)。

〔維新・復古と文明的運動〕
 文明といえば頗る漠然たるようである。来月には御大典が行わせられるのである。即位の大典は二つの意味を持っている。一つは国の歴史、皇宗皇祖、即ち天壌無窮の神勅に依って万世一系の帝位をここに御践みになる所の儀式である。これは古い国体――国の歴史に導かれておる。而して高御座に座して四海に君臨遊ばすことは将来の国の盛事である。
 明治大帝の明治元年御即位の時は如何なる時代であったかということを諸君は記憶する必要がある。諸君は皆なんだか若い人が多い。多分その後に生れた人であろう。しかしながら歴史的に国民として脳裡に一日も忘れることの出来ぬところの帝国の文明的運動の始まりは、明治大帝御即位に端を発している。即ちその当時日本の帝室を中心として国民の思想に大なる運動が起ったのであるが、これに二つの精神が現れておった。その時の言葉に王政復古というのがある。今一つは王政維新という。矛盾したように見られるが、決してそうではない。一つは後戻りして古に復するという、一つは将来に向って帝国は旧国なりといえども世界的に活動して新たな運命を開こうという。旧邦といえどもその命維れ新たなり。古い国もここに大改革をして将来に新しい運命を開き、人心を新たにし、国民の思想を新たにし、国民の働きを新たにする。かく社会上からすべての人心の上に新しい空気を与えるのは、これ即ち文明的運動である。新しい思想を起さんとすれば、古い過てるものを除かなければならぬ。これ王政復古である。復古という意味は頗る雄大なる意味を持っているのである。日本はかつて支那、印度の文明を採用して日本の文化がある程度まで非常に進んだ。ところがこれに弊が起った。そこで王政復古は神武の昔に復せしめるという大命令である。維新の国家事業が神武天皇の雄大なる帝国の基を御開きになったその時代に復するというその時に当っては、なんら他の支那、印度その他の文明も何も眼中にない。日本帝国の根本の思想が其処に存在している。何でも世界の善を入れるという大なる希望がただあったのみである。神武の古に復して、而して人心を新にし全く新しい政治を行い、即ち精神上にも物質上にも旧物をことごとく捨てて、新たに国政を行おうとせられた。これ即ち明治大帝の大なるゆえんで、東洋諸国から日本が全く軽蔑されず、独立して勃然と帝国の新運命を開くに至ったゆえんである。
 大政維新……大政維新とはあ…

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