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トーマス・エディソン
トーマス・エディソン
作品ID58161
著者石原 純
文字遣い新字新仮名
底本 「偉い科學者」 實業之日本社
1942(昭和17)年10月10日
入力者高瀬竜一
校正者sogo
公開 / 更新2019-02-11 / 2019-01-29
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

日常生活と発明

 科学や乃至はそれを応用した技術の上でのいろいろの発明がわたしたち人間の日常生活の有様を著しく変えて、そこにすぐれた文化の世界をつくり出してゆくことを、よくよく考えて見ますと、人間社会にとってこれらの発明がどれほど尊いものであるかということが、しみじみとわかって来るでしょう。
 ところで、現在皆さんは電気のいろいろの利用によって日常生活がどれだけ便利になっているかをよく知っているでしょう。そのなかで、電信や電話は遠方の人たちとの交通を容易にしていますし、電灯は暗い夜を明るく照らしてくれますし、いずれもわたしたちにとって有難いものであるに違いありません。また電気以外にも、蓄音機や映画などがどれだけ日常生活を楽しくしてくれるかも、皆さんはよく知っているでしょう。ところが、これらを発明したり、又はよいものに改良したりして、実用に使われるようにするために、大いに骨を折ったのが、ここでお話ししようとするアメリカのトーマス・アルヴァ・エディソンなのですから、私たちが今日彼のおかげをどれほど多く蒙っているかを、まず考えなくてはならないのでしょう。エディソンは数多くの発明をなし遂げたので、世俗から発明王とまで云われたのですが、元来貧しい家に生まれて正式の学問などをまるで受けなかったので、ただ自分の好むままにその道に進んだと云うのですから、驚くのほかはありません。併しそれは人間が一生懸命に事を行えば何事にも成功するということを示した一つの模範として、一層意味が深いと考えられるのです。そういう意味で、皆さんもエディソンの伝記を知って頂きたいと思うのです。

発明への出発

 エディソンは今から九十五年前の一八四七年の二月十一日に、アメリカのオハイオ洲にあるミランという町で生まれました。七歳の時に、一家はミシガン洲のポート・ヒューロンという処に移り、そこで公立学校に入学しましたが、この頃から彼はどこか風変りな性質をもっていたと見え、学校の教師は低能児だと早呑みこみして両親にそれを告げたので、母親は彼を退学させて、自分で教育することにしました。学校に通ったのは僅かに三箇月ばかりで、ですから彼はその長い一生のうちで僅かにこの三箇月だけ学校教育を受けたのに過ぎないのでした。
 それでもエディソンはこの幼い頃から自分で何かを工夫して見たくてたまらなかったので、十一歳頃になってからは、僅かの小遣銭でいろいろな薬品を買って来て、それを家の地下室へ持って行って、物化学の実験を試みていたということです。ところが薬品を買うにしても少しばかりの小遣銭では足りる筈はないので、何とかして自分でその費用を得たいと望み、十三歳になった頃にグランド・トランク鉄道の支線を走る列車のなかの新聞売子になり、それで幾らかの給料をもらうことになりました。もちろん、それも実験をして見たいからのことであり…

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