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門にて
もんにて |
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作品ID | 58700 |
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原題 | AT THE GATE |
著者 | クロッサー マイラ・ジョー Ⓦ |
翻訳者 | The Creative CAT Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | The Creative CAT |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2018-11-01 / 2018-10-24 |
長さの目安 | 約 12 ページ(500字/頁で計算) |
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毛足の長いエアデールテリアが、鼻をひくつかせながらとぼとぼと大道を歩いていました。初めての土地で、先だった兄弟の後を追ってここまできたのです。始めたくて始めた旅ではありませんでしたが、しつけの行き届いた犬らしく不平はこぼしませんでした。道連れのない一人旅、もし鼻先に数え切れないほどの犬の跡がなかったとしたら彼の元気はとっくに挫けていたでしょう。でもこの臭いからみて、道の先にはきっと仲間がいるに違いありません。
あたりは始めのうち荒涼とした感じでしたが、このところ恐ろしく痛んだ身体から苦悶がふっと抜けると、それがとても急だったので、何か痺れた感じになり、まもなく道沿いの犬の国を心ゆくまで楽しめるようになりました。地面からは葉を茂らせた木々が伸び、間を駆け抜けてみたくなりますし、草ぼうぼうの長い坂はどこまでも走っていけそうです。湖に飛び込んで木の棒を咥えて戻れば――しかし彼はここで考えるのをやめました。あの少年と一緒ではないのですから。ちょっとホームシックになりました。
気が楽になったのは、彼方に大門を認めた時でした。高さは天を衝き、なんだって通れるくらい広い門です。こんな門を作れるのは人間だけだということが彼にはわかっていて、目を凝らすと、人間たちが何であれその先に入っていくのが見えるような気がしました。彼は、男や女の手によって美しく作り上げられたあの囲いの中に一刻も早く飛び込みたい一心で駆け出しました。ですが、彼の足は思い通りには速く動かず、残してきた家族のことを思い出したのです。この新たな美しい結びつきも、あの家族がいなければ完璧なものにはならないのだと。
さて、犬の臭いは大変に強くなり、近づいていくと、驚くなかれ彼より前に数え切れない程の犬たちが到着しており、その内の何千頭もが今もまた門の外に集まっているではありませんか。犬たちは入口をびっしり取り巻きながら大きな輪の形に座っていました。大きいのも、小さいのも、巻き毛のも、立派なのも、雑種も純血種も、老いも若きも、いろんな顔だちのいろんな性格の犬たちです。皆ともに何かを、誰かを待っている様子がありありとしていて、エアデールテリアの肉球が固い道に落ちる音がすると、一斉に立ち上がってこちらを見たのです。
そんな興味も、新参者が犬だと見て取るとたちまちの内に去り、そのあっけないことに彼は戸惑いました。これまで住んでいたところでは、四本足の兄弟は相手が友達ならば喜んで迎え、よそ者ならば胡散臭そうに外交術を振るい、敵対する者には鋭い非難を浴びせたものです。まさかそれを完全に無視するなんて。
立派な門構えをした大きな建物にたびたび見かける掲示があって、それが「犬を入れるべからず」という意味であることは覚えていました。もしかして門の外で待っているのはそんな掲示があるからだろうか、と心配になりました。この高貴…