えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

風に吹かれる木の葉
かぜにふかれるこのは
作品ID58710
著者前田 夕暮
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本の名随筆37 風」 作品社
1985(昭和60)年11月25日
入力者浦山敦子
校正者noriko saito
公開 / 更新2024-07-27 / 2024-07-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より


 風に吹かれる木の葉をみてゐると創生紀時代が思はれる。原始時代の姿が見える。
 風に吹かれる木の葉をみると、永遠と瞬間とを同時に感じられる。
 風に吹かれる木の葉をみると、踊りを聯想する。しなやかなしろい手をひらりひらりとさせたり、扇をひらり、ひらりさせたりして、顫動的に体を動かす踊を見てゐるやうだ。
 木の葉では桂の葉がなかでも踊りの手ぶりをあらはしてゐる。ある夏私は日光中禅寺湖畔に遊んだ時、湖岸に近く数本の薄灰色の喬木が、朝に夕に其光沢のある広卵形の対生の木の葉をひらひらさせてゐるのを、いかになつかしく眺めたか知れない。この木は、あるかなしかの微風にさへ、いかにも喜ばしげに葉といふ葉を日光のなかでひらひらさせてゐる。外の木は静まりかへつてゐるときでさへ、生々とそれこそ嬉々として動いてゐる。この木にばかり風がきて遊んでゐるやうである。その木は桂であつた。



えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2025 Sato Kazuhiko