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詩四章
しししょう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「三好達治全集第一卷」 筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日
初出「明朗 創刊號」1936(昭和11)年3月
入力者kompass
校正者大久保 知美
公開 / 更新2019-01-26 / 2018-12-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


春の計畫

粉雪の中で 四十雀が啼いてゐる 春が眞近にせまつてきた
谿間で風が鳴つてゐる 楢山毛欅櫟 それらの枯葉が 雪の上を走つてゐる
山山よ 裸の木木よ 樂しい冬も 間もなく冬も終るだらう
懷かしい私の友垣 風よ 雲よ 山山よ 私達の友情の さて 春の計畫を考へよう

その昔

その昔 その山のその旅籠へは 米も野菜も新聞も 煙草も手紙も
電報も 牛の背中で運んできた
谿に臨んだ細路に のつと牝牛が顏を出す 午後二時三時
山では仔牛が待つてゐた 踏みしだかれた草の香の ほろほろ苦い牛小舍に

雪後

向ふの山で樹が伐られる ああまた一本倒された
微かな音も聞えない 小さな人が動いてゐる
たぶんあそこの親爺だらう…… 息子かな
ヒュッテに煙がたつてゐる


筆硯枯渇

油が盡きた ランプの焔が小さくなる
後ろの山で風が鳴る
やみなん 神安息を垂れ給ふ
萬年筆のインクが凍みた



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