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耳たぶの穴の一例
みみたぶのあなのいちれい
作品ID58778
著者柳田 国男
文字遣い旧字旧仮名
底本 「定本柳田國男集 第十五巻」 筑摩書房
1963(昭和38)年6月25日
初出「民間傳承 八卷八號」1942(昭和17)年12月
入力者フクポー
校正者植松健伍
公開 / 更新2025-03-07 / 2025-03-03
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 奈良縣吉野郡天川村坪ノ内の寺井といふ家名の一族の人々には、耳たぶに針で突いたほどの穴があるといふ。是は昔ガタロ(川童)と約束して、此家の子孫の者は決して取らぬといふので、其しるしに耳たぶに穴をあけて置くことにしたのだと謂つて居る。川童との約束は他の多くの例のやうに、馬に惡戲して曳かれたといふのでは無く、こゝの言ひ傳へは「水蜘蛛の怪」といふ話の系統に屬する。即ち釣を垂れて居ると蜘蛛が來ては絲をかけるので、それを警戒して逆に陸の上へ引張り上げて退治したといひ、他できかぬことは、是には柿の樹にしがみついたといふ話が附いて居る。宮本常一君の吉野西奧民俗採訪録は忠實な聞書きだが、此中では天川村の記事が精彩を帶び、殊に寺井氏一門を含んだ坪内の社家の生活が、殆と湮滅の瀬戸際に於て保存せられて居る。山間生活と古代信仰との結び付きに就ては、考へさせられる事蹟が甚だ多い。



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