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すずの兵隊さん
すずのへいたいさん
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ」 新潮文庫、新潮社
1967(昭和42)年2月10日
入力者チエコ
校正者木下聡
公開 / 更新2020-05-05 / 2020-04-28
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるところに、二十五人のすずの兵隊さんがいました。この兵隊さんたちは、みんな兄弟でした。なぜって、みんなは、一本の古いすずのさじをとかして作られていましたから。
 どの兵隊さんも、鉄砲をかついで、まっすぐ前をむいていました。着ている赤と青の軍服は、たいへんきれいでした。兵隊さんたちは、一つの箱の中に寝ていたのですが、そのふたがあけられたとき、この世の中でいちばん先に耳にしたのは、「すずの兵隊さんだ」という言葉でした。
 そうさけんだのは、小さな男の子で、うれしさのあまり、手をたたいていました。その子は、誕生日のお祝いに、すずの兵隊さんたちをもらったのです。
 男の子は、さっそく、兵隊さんたちを、テーブルの上にならべました。見ると、どの兵隊さんも、とてもよく似ていて、まるでそっくりです。ところが、中にひとりだけ、すこし変ったのがいました。
 かわいそうに、その兵隊さんは、足が一本しかありません。それというのも、この兵隊さんは、いちばんおしまいに作られたものですから、そのときには、もうすずが足りなくなっていたというわけです。でも、その兵隊さんは、一本足でも、ほかの二本足の兵隊さんたちに負けないくらい、しっかりと立っていました。
 では、この一本足の兵隊さんについて、これからおもしろいお話をしてあげましょう。
 兵隊さんたちのいるテーブルの上には、ほかにもまだ、いろんなおもちゃがおいてありました。いちばん目につくのは、紙でつくった、きれいなお城でした。小さな窓からは、中の広間も見えます。お城の前には、小さな木が、何本か立っていました。その植えこみにかこまれて、小さな鏡がありました。これは池のつもりなのです。池の上には、ろうでできたハクチョウが、幾羽もあそんでいて、そのまっ白な姿が、池の上に美しくうつっていました。なにもかも、ほんとうにかわいらしく見えました。
 でも、なんといっても、いちばんかわいらしいのは、開いたお城の門のところに立っている、小さな娘さんでした。やっぱり、この娘さんも、紙で作られてはいましたが、でもスカートなどは、それはそれはきれいなリンネルを使って、こしらえてありました。肩には、小さな、細い、青いリボンが、ショールのようにひらひらしていました。リボンのまんなかには、娘さんの顔くらいもある、大きな金モールのかざりがキラキラ光っていました。
 小さな娘さんは、両腕をぐっと高くのばしていました。つまり、この娘さんは、踊り子だったのです。かたほうの足も、ずいぶん高くあげていました。この足が、一本足の兵隊さんには見えませんでした。それで、兵隊さんは、この娘さんも、きっと、ぼくと同じように、かた足しかないんだな、と思いました。
「あの人は、ぼくのお嫁さんにちょうどいいや」と、兵隊さんは考えました。「だけど、あの人は、ちょいとりっぱすぎるかな。なにしろ、あ…

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