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心霊現象と科学
しんれいげんしょうとかがく
副題――『心の領域』について――
――『こころのりょういき』について――
著者中谷 宇吉郎
文字遣い新字新仮名
底本 「中谷宇吉郎随筆選集第二巻」 朝日新聞社
1966(昭和41)年8月20日
入力者砂場清隆
校正者岡村和彦
公開 / 更新2020-07-29 / 2020-06-27
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

心霊は信じ得られるか

 リーダーズダイジェスト誌の五月号に、『心の領域』というかなり長文の記事がある。デューク大学の「超心理学」実験室長ライン博士の著書の紹介である。
 超心理学というのは、従来の心理学の範囲を超越した心理現象を研究する学問という意味であろう。たとえば読心術とか、透視(千里眼)とか、予見とかいう種類の精神作用を研究する学問なのである。
 従来の心理学はもちろん科学の一分野であり、少なくも広い意味での科学の中に含まれている。この超心理学に類似の「学問」は、以前からもあったので、何も珍しいことではない。いわゆる心霊現象の話は、日本でも外国でも昔からあり、み子とか、口寄せとか、妖術師とかいうふうな話は、人類につきものであった。
 もっともこれらは如何なる意味でも学問という形にはなっていなかった。ところが十九世紀の末頃から、心霊現象の研究が、一種の学問の形をとり出した。各国にいろいろな団体などが出来て、こういう現象に特に興味を有する人たちの間では、かなり活溌な運動が展開されてきた。そういう傾向は、日本よりもむしろ科学の発達した欧米諸国の間に強く見られた。英国の有名な物理学者のオリバー・ロッジ卿が、晩年に熱心な心霊研究者となった話はあまりにも有名である。
 日本のこの種の話は、明治時代の有名な千里眼にしても、近年或る術師が東京の真ん中で何処とかの山から宝剣を飛来させようとした事件にしても、まことに他愛のない子供だましの話であった。しかし欧米の心霊研究者たちの研究の中には、かなり真面目なものがあり、方法も科学的と言い得る方法がとり入れられて来た。そして読心術、或いは精神感応現象くらいまでのところは、科学者の中にも承認する人もあるようであった。
 ところでライン博士の今度の著書にある研究は、従来一部の心霊同好者の間に行われていた不完全な実験を大学の実験室で、数学者と協同して、「科学的」に完全な形で大規模に行なったという点に特徴がある。
 実験は、読心術即ち精神感応と、透視即ち千里眼と、予見と、精神動力との四種類に分けることが出来る。そしてそれらが全部肯定的な結果となったというのである。以下ダイジェスト誌の記事によって、その簡単な説明をしておこう。

読心術の実験

 一人の人が或る物体または絵を考えている時、他の人が別室またはもっと遠く離れたところにいて、その物体または絵を言いあてる実験である。この実験はオリバー・ロッジ卿時代からいろいろなところでくり返し行われて来たもので、「科学的に研究された最初の心霊現象」ということになっている。
 ライン博士によると、この実験は一九二〇年代に、二つの著名な大学の実験室で行われ、その他にも個人研究者の探究はおびただしいものがあるそうである。そして「およそ調査研究なるものの標準に照らして判断すると、これら実験の結果は、…

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